夢物語
□三日月逢瀬
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『…今夜は三日月だな…』
切れ長の目が特徴的な
男がふと呟いた。
月灯りに照らされる横顔は
完成された美術品の様に
美しく白く浮かび上がる
『……あぁ…。』
一方で一言呟いたのは
女性と見違う程の白肌に
桜色の口唇をした男。
外見とは異なり低く
掠れた声が先刻の艶事の
情景を生々しく描いている。
−心此処に在らず−
互いが欲しくて…欲しくて…
本能赴くままに貪り合って…
いざ事が済めば気怠く
薄情な程に冷めていく身体の熱…
そんな言葉が二人の間を
隙間風の様に音を立てて通り過ぎた…