夢物語
□薄紅ノ嵐
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桜が散り始めた
四月の風の中で
儚い恋に堕ちた…。
漆黒の髪
切れ長な瞳
纖かやな指先…
触れる事すら躊躇う程
美しく俺の眼に写る。
『どうした…?秀』
薄い口唇が開いて
甘く低い声が俺を呼んだ。
『なんでも…ない。』
…言えるかよ…。
お前に見惚れてたなんてよ。
対して気にかけず
夜の桜並木を潜り歩く勇次…
不意に振り返り空を仰いで
『見てみなぁ…秀。薄紅色の嵐が降るぜ…?』
風が花びらを舞上げて
空を薄紅に染めて…
『儚ぇな…桜ってなぁ…』
呟く様に言葉を紡いだ横顔が
俺には…泣いてる様に見えた。