頂き物U
□とある関係に終止符を
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――――例えばこの関係の終わりは、どんなだったか。
終止符を打つ、という表現は良く使うけれど、
本当に潔く、ただの一点だけで終わってしまえるのならば、どんなに簡単だろう。
コツ、と、ペン先が薄い紙を通して、机に当たる音がする。
ペン先を動かせずにいれば、じわりとインクが滲んで、手を離した。
紙上に出来たのは、大きな大きな終止符。
想いにも、こうして一点が打てるのならば良かったのに。
「恋人ごっこはいい加減やめにしないか」
二人きりの静かな執務室で、女性にしては少し低い、アルトの声が響く。
カガリは傍に立つアスランを振り返り、向き直った。
こうして真っ直ぐに瞳を見たのは随分と久し振りに思う。
今まで恋人として、公務の合間の短い時間だけを束の間の逢瀬として使っていた。
職務に戻れば上司と部下の関係。逢えば身体を重ねるだけの時間。
そこに言葉はなく、けれど言葉を必要としないほど、私達は大人ではなかったはずだ。
想いの形が見えないままでの、表面上の二人。
穏やかな時間を過ごす訳でもなく、欲求を満たすだけの行為のみが唯一の接点だった。
これが”ごっこ”でなくて何だというのだ。
アスランには笑顔で抱き締めてくれる、可愛い女性が似合う。
数日前、偶然見てしまった、あの、彼女のような。
―――――――心が伴わない、都合の良い関係だなんてごめんだ。
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