ぴかちぇの冒険☆
□第T楽章
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パッ――――
反射的に横に跳んだ。自分でも驚く位、身軽に。
(……あれ?)
実は自分の運動神経はゼロに等しく、今まではもしも誰かに襲われたら運を天に任せて助けを待つしか手段は無かったのだが……。
「うぐ……。逃がすか! こんなに旨そうなヤツを……」
オオカミはパッと方向転換すると、跳び上がって頭上から襲いかかる。
次の瞬間には自分は孟スピードで草をかき分けかき分け走っていた。
「ああああぁぁっ!?」
依然として二本足で立てず、よつんばいになって逃げていた。
オオカミが孟スピードでこちらに迫る。
逃げる途中に大きく跳躍したりジグザグに蛇行したりして、どうすれば追っ手から逃れられるか、思考回路をフル回転させて考えていた。
オオカミ……イヌ科……近眼……鋭い聴覚、嗅覚……
と言うことはオオカミは音と匂いを頼りにこちらへ追って来る。
暫く走ると、前方に川が見えて来た。
(そうだ! 川の中に!)
川なら、音も匂いも消せる! そう感じた直後に、無我夢中で川に飛込んだ。
ザバアァァン!!
「ん!? どこに行った!?」
突然、獲物が視界から消え失せ、オオカミは立ち往生した。
……上手く逃げ切れた。
ひとまず難は逃れた。
だが………
ゴオオオ……!!
一難去って、また一難。
飛込んで、初めて気づいた。この川の流れがとんでもないこと、そして今更気づいた。自分が「カナヅチ」だったことに。
「い゛や゛〜!!」
成す術なく、激流に流されて行く。
「ん! あそこだ!!」
悲鳴を聞き付けて、オオカミは獲物の影を見つけ出すと、激流に飛込んでいった。だが…………
「おォッ!?」
オオカミも飛込んでから気付いたらしい。激流に押され、下流の方へ流されて行く。
「ギャーーッ!!」
「ウアァァッ!!」
ハンターとその獲物は、激流を目の前に、互いの立場を忘れて仲良く流されて行った。
「なっ、なぬ!?」
流れに揉まれながらオオカミが下流へ目をやると、川の流れと周りの景色が途中で見えなくなっていた。