ぴかちぇの冒険☆
□第T楽章
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「行き止まりか?」
「違うっ、滝だよ滝!!」
「何〜っ!?」
流れの先は落差100メートル近くある滝だ。このまま流されて行くと滝で岩に叩きつけられて、ただ事では済まされない。
「どっ……どうしよう………」
「くっ………」
こんな状況下で獲物が捕れる捕れないなんて言ってられない。互いに助け合わなければ助かる道は無い。
二人はあれこれ考えた。滝はすぐ目前に迫っていた。
すると、
「お〜いリク〜」
どこかから声が聞こえてきた。
「この声は……フィルか?」
声に気付いてオオカミはハッとした。
このオオカミの名前は「リク」と言うらしい。そして声の主の名前は「フィル」。
(もしかして……またオオカミ?)
と思ったが、今はそれどころではない。オオカミからなら逃げられるようだが、激流からは逃げられない。
声がしたほうを見ると、そこにはオオカミ………ではなく、カワウソがいた。
(か……カワウソ?)
一瞬、目を疑ったが、声の主は確かにカワウソであった。
「って、あぁぁっ!?」
ちょうど滝に流れついてしまった。
水圧で放り出され、途中で岩に叩きつけられる。
「ぐ………!」
瞬時にその岩を掴んだ。
「うわぁぁっ!!」
オオカミのリクは成す術なく、滝壺へ落ちて行った。
「あっ、オオカミ!」
落差が余りに大きいため、滝壺を見ようと思っても、ここからは良く見えない。
……あのオオカミはどうなったんだろう。
そう思ったが、すぐに首を振った。
「いやいや。今はどうしようか考えなきゃ……」
今自分が居るのは滝の途中の岩。そこに手足を引っ掛けてしがみついていた。
上からは絶えず激流が降り注いで来るので、滝を登る鯉のような事は出来ない。
「ねー君大丈夫!?」
頭上からあのカワウソが覗き込んで来た。
「う……うん」
現状維持がやっとなので、まともに返事が出来なかった。