ぴかちぇの冒険☆

□第T楽章
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第2話『新たな住民』


 見かねたフィルは、この困ったウサギさんを手助けするべく、考えた末とりあえず寝床を提供しようと思ったのだ。
「え…………?」
 ぴかちぇが動揺するのも無理はなかった。いきなり見ず知らずの人(カワウソ)に『家に来なよ』と言われたら警戒するに決まってる。だが…………
「………いいの?」
「うん」
「じゃあお言葉に甘えて!」
……………このウサギが物騒なご時世を生きてきた人間だったとは非常に言い難い会話だった。
 とりあえず安全な場所が欲しかったのか、このカワウソは悪い奴と思わなかったのかは知らないが、ぴかちぇはあっさりとフィルの後をついていった。

 フィルの家はここからすぐ近くにあった。
 動物でもともとカワウソと言う種族が影響しているのか、建築物の家ではなく巣穴だった。
「ごめんね〜……。
人間ならちゃんとした建物が良かったよね?」
 人間だったウサギに対して『巣穴』は失礼だったかと思ったフィルは申し訳なさそうな顔をしていた。
 そのフィルの言葉を聞いたぴかちぇは目を丸くした。
「え………? てことはこの世界にも『建物』ってあるの?」
 その訊き方は失礼ではないかとぴかちぇに疑問を持つ人も少なくないだろう………。
 ここは動物達が文明を築いた世界。建物の一つや二つぐらいはある。
「あるよ。ま、文明が進んだ地域だけね」
「へぇ………」
 「まぁこの辺は文明が遅れてるかもね」とフィルは苦笑いしながら扉を開けて家の中に入って行った。ぴかちぇも後に続いた。
 巣穴の中はとても広く、入ってすぐの玄関はホールのようになっていた。
「ここは共同の家なんだ!」
 ホールを飾る装飾品に見とれているぴかちぇにフィルはそう言った。
「きょうどう?」
 ぴかちぇは装飾品から目を反らし、フィルの方に向いた。

 共同の家とは、人間の世界で言えばアパートやマンションのことだよね………。

 フィルの説明を聞いてぴかちぇはそう思った。
 そのホールからはいくつか通路があって、どうやら枝分かれしているようだ。それらの通路のうちの一つをフィルは通って行く。ぴかちぇも言うまでもなく後に続いた。
 通路の両側にはドアがいくつかあった。ここの住人の部屋のようである。
 ドアにはプレートがついていて、それには住人の名前が書かれていた。
 しばらく歩いて行ったフィルはあるドアの前で止まった。


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