*弱虫ペダル*

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巻島が旅立つ日……総北の皆は練習をしていた。それは巻島が言ったからだ。だが漆世は違った。一人空港のロビーで巻島を待つ、人が多くて見つかるか心配だが巻島はとつも目立つ……緑の髪を頼りに漆世は巻島を待った。そして見つけた。














巻島「っ────………漆世………まっお前は来るよな?」

『せめて私くらいは見送らせて?』






巻島は手に携帯を持っていた。きっと東堂が見送りの電話をくれたのだろう。本当に東堂は友達思いだ。







『寂しくなったらいつでも帰ってきて良いのよ♪』

巻島「クハッ♪バカ言うな……寂しくても何とか耐えて見せるッショ……」

『自転車……止めちゃダメよ?』

巻島「向こうは本場ッショ……今から楽しみで仕方がないッショ。」

『ひっく;………わっ私達の事……忘れちゃ…駄目だからね?』






泣き出す漆世を巻島はぎゅっと抱き締める………小さな体が震えている。本当に漆世は優しい女だと思う。





巻島「泣くなって……言ったッショ?俺は漆世に泣かれるのが辛いっショ。」

『ごめんなさい;……ひっく;わらひも今日だけは…ちゃんと…ひっく;笑顔で見送るって決めてたのに……ひっく;』






止めどなく流れる涙。泣き止もうとしても涙が止まることは無かった。これでは巻島を困らせてしまうだけだ……






そう思っていると額に柔らかな感触が伝わる……巻島が、おでこにキスをした。




『裕ちゃん…?』

巻島「俺だって寂しくないわけ無いッショ?3年間ずっと漆世達と過ごして来たんだからな?……でも道は違っても俺達はずっと仲間だ。だから漆世?泣くな……お前はどんなときでも笑ってろっショ……その笑顔に俺達は救われるんだからな?」


『裕ちゃん………うん。……うん、うん。…私笑う……裕ちゃん達のために笑うわ?』





そう言って漆世は綺麗に微笑むのだ。巻島が凄く好きな笑顔で…



『ねぇ裕ちゃん?日本に帰ってきたら……必ず私達に会いに来てね?』

巻島「がんばるッショ。」

『二十歳になったら皆でお酒を呑むの…』

巻島「飲めるようになっとくッショ。」

『彼女ができたら報告すること。』

巻島「クハッ♪嫌みか?」

『絶対に……絶対に私達の事を忘れないでね?』

巻島「当たり前ッショ……」


巻島に抱き着く漆世の手に力がこもる。巻島はそんな漆世を優しく抱き締め返す。






巻島「なぁ漆世?俺に…餞別くんねーか?」

『私があげられるものなら何でもあげる。』






そう漆世が言うと次の瞬間、唇に柔らかな感触が伝わる……目の前には巻島が凄く近くに居た。………唇から柔らかな感触が離れると漆世は巻島にキスをされた事を認識する。





『ゆっ;////裕ちゃん;///』

巻島「クハッ♪漆世…顔真っ赤ッショ。………今日で最後なんだ……こんぐれー貰っても良いッショ♪」


そう不適に笑う巻島に漆世はもうっ……と内心思いつつもフッと笑うと





『私なんかのキスが餞別になるなら良かったわ?ねぇ裕ちゃん……貴方が育てたクライマーは素直で約束を守る男よ?そうなったのも……裕ちゃんのお陰ね!?』


巻島「あれは元の性質ッショ。でも……坂道に会えて本当に良かったと思ってる……漆世が見つけたクライマー……総北の魂をちゃんと受け継いだッショ。本当に漆世には叶わねーッショ。」


『裕ちゃん。大好きだよ!?……向こうでも頑張ってね!?……』


巻島「俺も大好きッショ……」















最後は笑顔で送れた……飛行機へと乗り込む巻島の背中を何時までも眺めていた。











━━━━━━━…………




東堂「巻ちゃん;|||漆世にキスしたのか!?」

巻島「うわっ;繋いだまんまだったッショ;つか、聞いてんじゃねーショ!!」

東堂「聞こえてしまったんだ!!…………巻ちゃんは漆世に思いを伝えないのだな?」

巻島「何を言い出すかと思えば……言うわけねーショ……そもそも…俺達は漆世にそう言う感情を抱いちゃいねーッショ…」

東堂「そうなのか?」

巻島「あぁ何つーか……確かにヤりたいかって、言われたらヤりたいけど…憧れみたいな……俺が女だったらこうなりたいって……そう思う女なんだよ。漆世は……」

東堂「………そうか。確かに漆世は格好いい。あの強さ、優しさはなかなかいない。……総北は漆世の事をそう思っているのだな?」

巻島「そうッショ……まっ♪キスは餞別に貰ったッショ♪あっ新開に言うなよ?めんどくせーから……」


東堂「言わんよ。友の願いだからな?時に総北はどうだ?うちは泉田が新キャプテンになりさらに練習に気合いが入っているぞ?」

巻島「うちも似たようなもんショ。………でもまっ……何つーか…今年は荒れる気がするんショ。」

東堂「それは新入生のことか?」

巻島「さあな。でも何か……」













感じるんショ………アイツが…帰ってきそうな予感が…








巻島はこの時の予感が…的中するとは思わなかった。そしてまさか……ロンドンで彼に出会うとも……

















━━━━━━━━…………







巻島がロンドンに来て3週間たった日の事、町を歩いていたら背後から知った声が巻島を呼んだ。






『えっ?………裕さん!?』

巻島「?……あっ?漆馬ッ;!!お前なんでここに;!!」

『うわっ♪超、久し振りですね♪でもなんで裕さんがここに?』

巻島「それはこっちの台詞ッショ;!!」




















運命が動き出した瞬間だ。












end
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