*brotherS*

□★2
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出会いはいつだって突然で




現実は何時も私に優しくなくて



そんな現実に私は




瞳を固く閉ざし




自身にとって一番



最善の策を取るようになった











*雨が好きなヒト*











ザ━━━………



時刻は夕方6時…昼間のカフェの仕事も終わり家に帰ろうと支度を始めた。だが外は一時間も前から降りだした雨が視界を遮るほどの豪雨だった。だが杜琶はこういうときのために常に折り畳み傘を所持していたため濡れずに帰れそうだと外に出た。店の軒先、そこには急な雨で雨宿りをしている男性がいた。







そう……この出会いが杜琶の人生をひっくり返すほどの出会いになるなんてこの時の杜琶には思うはずもなかった。









━━━━━…………





男性はスーツを着たサラリーマン風の人だった。外回りなのか鞄には資料が詰まっている。重そうだった。
背は170台後半位であろう高さがあり細身だがしっかりとした筋肉がついてそうであった。






杜琶はそんなことを考えつつ何気なく前を見るとソコにはよく知った男性がよく知る彼女と歩いていた。






その男性は杜琶の記憶が正しければ杜琶の彼氏であろう人だった。そしてその隣にいるのは二卵性の杜琶の双子の妹の桜だった。二人は仲良く手を繋ぎながらあろうことか公然の面接でキスをした。





本来なら怒るのであろう光景だがが杜琶にはもう慣れしまった光景だ。桜が杜琶の彼氏を盗るのはこれが初めてなわけではない。初めのうちは悲しかったがソレも次第に無くなっていった。






また何時もと同じ……




そんな事しか考えなくなっていた。まぁもともとそこまで好きで付き合ったわけでもなく告白されて今はフリーだったし別に良いかとオッケーした。キスはしたがソレ以上はしていない。否、26年間1度もその行為には至っていない。キスまでで杜琶の経験は終わっている。





隣のサラリーマンの人を見るとさっきの二人を見てか公然の面接でよくやるなぁと言っていた。確かに私もそう思うと心の中で同意した。するとポケットに入れていた携帯が震えメールが届くとソレは先程の彼からだった。内容には察しがつく…別れのメールだと…案の定、感は当たり別れてくれとメールが来て杜琶はソレに同意して彼のアドレスを携帯から消去した。そして






『あの…良かったら傘使ってください。大事な資料が濡れてしまうといけないので。』


「えっ!?でもそしたらあなたが濡れてしまいますよ。大丈夫ですもう少ししたら小雨になるかもしれませんしいざとなったら服の中に入れて走りますから。」


『そうですね…でももっと雨足が強くなるかもしれませんよ?私は平気ですからどうぞこれ…』



「えっ;ちょっ;」


『私!!雨に濡れの好きなんです♪家もそう遠くないですしね♪傘は使ったら捨ててくださって構いませんから…』


「待ってください;!!」




杜琶は男性の言葉を聞かずに雨のなか走っていってしまった。




雨は好きだ…ソレは本当の事。だって余計な思考も余計な感情もすべて…洗い流してくれるから…





━━━━━…………





男性は一人、傘をくれた女性が走っていった方を見つめていた。身知らずの女性に傘をかり、その女性は雨のなか走っていってしまった。ソレに彼女はどうして鞄のなかに入っているのが重要な書類だと気がついたのだろう。





棗「名前…聞いておけばよかったな…傘もちゃんと返さないとだし…ここのカフェに来ればまた会えるだろうか?」




男性こと、朝日奈棗はそう呟いた。店から出てきた女性は藍色の強い瞳が印象的だった。黒が濃い灰色の綺麗な髪に白い肌、大きな瞳。ああ言う女性の事を絶世の美女と言うのだろうと棗は思った。実際、棗は彼女が店から出てきたとき息を飲むほどの綺麗さに少しの間、見とれていた。彼女はソレに気がついたのか棗のことも一瞬だがじっと見つめてきた。あの藍色の瞳に吸い込まれそうになった。とても魅了された。また逢いたいと思ってしまった。










━━━━━━………






家につくなり着ていた服を全部、洗濯機に放り込むとそのままシャワーを浴びた。冷たい身体が一気に暖まり気持ちがよかった。





ふと先程のサラリーマンの彼の事を思い出す。薄茶色の髪の毛に薄い紫の瞳、綺麗に整った顔をしていたなと思った。



ちゃんと傘は使っただろうか?

雨に濡れずに済んだろうか?

風邪は引いてないだろうか?




さっき彼氏にフラれたばかりなの 今はスーツの彼の事を考えていた。ソレはソレでありがたいことだと感じた。






『うん…… まだ大丈夫……』





少しも痛まないと言ったら嘘になるけど…ソレでも昔よりは全然平気だ。





『夜の仕事までまだ大分時間があるな…一眠りしよう。エステル…おいで♪』




愛犬のドーベルマンのエステルはワンと一声あげると杜琶が横になるソファに乗り、隣に寝転ぶと杜琶はエステルを抱き締め眠りについた。










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