*弱虫ペダル*
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今日から伊豆で4日間の合宿が行われる。勿論、その合宿には漆世もサポートとして参加する。選手達はマイクロバスで移動だが漆世は一人自身の愛車のホンダ、ワルキューレムーン(カスタム済)に乗り合宿場に向かっていた。静岡までの道のりを一人で走るのは苦ではなかった。今回の合宿は伊豆、近くには箱根がある。箱根には前回のインターハイ王者、箱根学園がある。偵察もかねて彼等の事を見に行くのはとても楽しみだ。そんなことを考えながら一人高速をバイクで走っていた。
━━━━━━━━…………
皆が走っている中、漆世はドリンクを作ったりタオルを用意したり、皆のデータを録っていた。
その日は皆とご飯を食べお風呂からでると自販機の前の休憩場に金城がパソコンを打ちながら何かをしていた。そんな金城を見つけると漆世は金城に、後ろから抱きつくと
『しーんちゃんっ♪何してるの?』
金城「漆世……今後の課題と各県の代表チームのチェックをな…」
『ふーん……あっ私、明日と明後日。箱学に偵察に行ってくる。』
金城「そうか……気を付けていけよ?」
『grazie♪挨拶もかねてね〜あっ♪ちゃんとお土産物買ったんだ♪じゃーんっ♪小どら♪』
金城「なかなか良いチョイスだな。それなら皆、食べてくれるだろう。」
『苺大福と悩んだんだけどね〜……福富君の顔も見てくるわ…』
金城「余り苛めるなよ…」
『余りね♪あっそうそう…スポーツ記事の取材が来てたわよ。どうするの?真ちゃん一人で対応する?』
金城「そうだな……まぁ明日には決めるさ。」
『そう。真ちゃん今日の走行距離は?』
金城「250キロだ。」
『そう…きっちりね?そのペースなら四日目の昼には終わるでしょう…』
そう予測する漆世に金城はいつもの事ながら先を見据えると思った。漆世は情報収集、戦略や予測、計算、そう言ったものが得意だ。頭がキレるなんてレベルではない。判断力、決断力もありチームに欠かせない存在なのだ。
漆世は総北の参謀だ。より多くの情報を手にいれ、その事から最もな事態を予測する。その事に金城達、総北は何度も助けられたのだ。
金城「頼りにしてるぞ。漆世。」
『Si…♪』
漆世は金城の頬にキスをするとBUONA NOTTE♪(お休みなさい)と言うと部屋に戻っていった。
次の日、漆世は少し早起きをすると坂道が調度、ロードの準備をしていた。
『さっかみっち君♪buongiorno♪』
━━━━ちゅっ♪
坂道「ひやぁっ;////!!!!!!!!」
急に背後に現れ、頬にキスをする漆世に坂道は悲鳴をあげた。
坂道「おおおっ;おはようございます;////姫先輩;///」
『おはよう♪坂道君♪早いのね!?これから走るの?』
坂道「ははははいっ;///あのっ;………僕は皆より遅いですから…その分、早く起きて走らないと追い付けないので…」
あぁ…この子は本当に素直で純粋で…漆世は坂道の頭をそっと優しく撫でると
『頑張りなさい坂道君。貴方ならきっと千キロ完走出来るわ。今はただ足を動かしなさい。そしてこの合宿で色んなモノを吸収しなさい……………』
坂道「姫先輩……」
『このロード……細工して得るわね?ホイールが普段のものより重くしてある……真ちゃんの仕業ね♪良く解ってるじゃない!?』
坂道「えっ;見ただけで解るんですか;!!!凄いです姫先輩;///僕は巻島さんに教えてもらうまで違和感はあったけど解らなかったです。」
『私の取り柄はそのくらいだからね……引き留めてご免なさいね?今日も頑張ってね?ちゃんと水分補給をして休むときは休みなさい。走るのよ坂道君。』
坂道「はいっ!!」
そう言って坂道はロードで走り出した。坂道の後ろ姿を見送ると漆世は嬉しそうに笑った。
━━━━━━━…………
『監督はどう思いですか?今回の合宿を………インターハイメンバーを…?』
ピエール「んー?貴方はどう思いですか漆世?」
『あら?質問を質問で返すのは反則ですよ監督?…………そうですね…きっと3日目で2年が1年に仕掛けるでしょう。それにこの合宿でインターハイメンバーが決まる。そして坂道君…小野田くんはこの合宿で成長するでしょう。』
ピエール「漆世は随分と小野田君をかっているようですね?」
『だって………彼は私が見つけた意外性♪予測の仕様がない……無限の可能性を秘めている。磨けば光る原石なんですもの♪』
ピエール「…………………」
そう言う漆世はすごく嬉しそうに笑っていたがその笑みはとても妖艶で恐ろしくも美しくもあった。
ねぇ……坂道君…私に貴方の可能性を…魅せてちょうだい。
漆世は皆のサポートをしつつ、1時になったら着替えバイクを走らせ箱根学園に向かっていった。
『じゃー行ってきます♪』
田所「おう!!気を付けていけよ?」
巻島「東堂には気を付けるッショ」
金城「楽しんでこい。」
『grazie♪ Vado♪』
(ありがとう♪行ってきます♪)
そう言うと漆世はバイクに股がると走り出した。
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『わぁー綺麗♪さすがに伊豆、箱根ね!!山も海も綺麗ー♪』
バイクを走らせ漆世は一人、箱根学園に向かって走っていた。
伊豆、箱根を景色を満喫しながら目的地に着いた。
『ここが王者……箱根学園。あっ隼人君、元気にしてるかしら?』
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新開「ん────……?」
荒北「あぁ?どーしたのォ?」
新開「……いやなに……何か呼ばれた聞かしてな…気のせいだろう。」
東堂「どうした隼人!?このスリーピングビューティーの俺が相談にのってやってもいいぞ?」
荒北「あーまじうぜー……キメェ…」
東堂「キモくないぞ荒北!?そうだろ?女子達♪」
東堂がそう女子に聞けば女子達はキャー♪とはしゃぎながらキモくないと口々に言っていた。その反応に荒北はうんざりしていて。
新開「漆世ちゃん元気かな………インターハイで会えるかな……会いたいな。」
新開がそんなことを考えてるとは露知らず、授業が終るのを待ち漆世は箱根学園の制服に着替え変装用の茶色のウィッグをつけ眼鏡をかけると学校に潜入した。
『あー悪ふざけが過ぎるのは解ってるんだけど……どうしてもこう言う楽しいことはやめられないのよね♪』
総北でもモデルの蛍とバレないように毎日を過ごしている。だから箱根学園の放課後の生徒が入り交じる時間帯なんてチョロいものだと漆世は思っている。
学校に入ると何やら女子達がキャー♪とはしゃいでいた。漆世はその声の方に向かっていると見たことのあるメンバーがいた。あれは箱根学園、自転車競技部のメンバーだ。しかも
『東堂君に荒北君に隼人君だ。あっ♪どーせならアレやっておこー♪』
━━━━━━…………
「キャー♪東堂様、いつもの指差すやつやってぇー♪」
東堂「フッ♪」
ビシッと女子達に指を指すと女子達はキャーキャーとはしゃいでいた。それを間近で初めて見る漆世は正直、笑うのを必死に堪えていた。
《だっだめよ;///今、ここで笑ってしまったら潜入がバレてしまう;///でもっ;!!東堂君の面白さはツボだよーっ;///ふっ……くくくっ;///》
それに漆世はこの声援に便乗してやるのだと決めたんだ。東堂は女子の要望に答えウィンクまでしていた。そして
『きゃー♪東堂様♪いつものビートたけしのモノマネやってぇー♪』
東堂「何だこの野郎ばか野郎!!ってやったことないのだよ;!!!!」
『っ─────………;///////』
漆世は東堂のその姿を見るとすぐにその場を走って去っていった。
荒北「誰今のォ;///クソ面白い子がファンにいたんだなァ;///ぶっくくくっ;///」
新開「尽八はくっ;///ぶふっ;///モノマネまて出来るんだな;///」
東堂「笑うなら笑えば良いだろう……無理に我慢するんじゃないのだよ。」
東堂のその言葉に二人は大声で笑い出した。だが女子達はさっきの事で
「でもあの子誰だろ?」
「何時いる子じゃないよね?」
「うん、初めて見る子だった。」
「私、隣だったけど眼鏡かけてたけど綺麗な蒼い目の子だったよ。」
新開「蒼い目……;えっ;まさかっ;!!」
荒北「Σおいっ新開っ;!!」
新開は走って去っていった女の子を追いかけるようにその子がいなくなった方に走り出した。荒北と東堂は急なことに呆気に取られたが東堂はハッと何かを思い出したように
東堂「まさかあの子が来てると思って……」
荒北「あー?あの子ってェ?」
二人は部室に足を進めながらそう話していた。
東堂「ん?あー荒北は知らんかもしれんが隼人にはお気に入りな女子がいてな?その子は総北自転車競技部のマネージャーなのだが今朝の取材で総北がここから20キロ離れたサイクリング施設に合宿に来ていると言っていた。もしかしたらあの子がここに来ているかもしれんと思ってな?」
荒北「あぁ?でもよー…さっきいた女子全員、うちの生徒だったぜェ?ちゃーんと制服も着てたしィ?」
東堂「…所がな荒北。あの子は普通の女子とは少し違っていてな…箱学の制服を入手し、潜入するくらいの事を軽くこなす子なのだよ。見てて飽きないぞ♪面白い子だから!!巻ちゃんもそう言っているしな!!」
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