*弱虫ペダル*
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神奈川県藤沢市江ノ島。相模湾沿いに長く続く海岸線に唯一突き出た小さな島は普段は情緒漂う観光の島としてにぎわっている。
夏のインターハイ3日におよぶロードレースはここからスタートする。
小野田「わーーー;!!!!すごい人ですねー!!自転車もすごいね!!お祭り…これはお祭りですか!!」
インターハイの熱気に驚いている小野田に漆世は可愛いなと笑った。そんな小野田達は選手のゼッケンと受付をしに本部に皆で向かった。開会式が始まると漆世達サポートチームは備品の確認をしていた。
『裕ちゃんにはスペシャル配合のドリンクと補給食3つ…迅ちゃんはエナジーバー5本とゼリー5本。真ちゃんはボトル2本とドリンクと水…』
漆世は、それらをバッグに積めると肩にかけた。緊張感と闘争心と願いと祈り……漆世はこの空気が好きだ。
汗とタイヤとオイルの混ざりあった独特の薫り誰もが頂点を目刺し並ぶ姿……彼等の鼓動が伝わってくる。
「間もなくスタート5分前です!!各選手はスタートラインにお並びください。」
━━真夏のレース……インターハイが始まる。
『皆おまたせー♪』
金城「すまないな。」
漆世は、3年の3人に各自のものを渡していく。
金城「1年の分は?」
『ちゃんとあるわよ♪』
そう言い1年の方を振り向けば明らかに緊張している小野田がいた。漆世は、そんな小野田にクスッと笑うと金城に寄りかかり
『あはっ♪面白いくらい緊張してるね。』
金城「無理もない。」
『あっ♪写真撮っておこー♪』
パシャっと緊張しまくりの小野田を写真におさめると漆世は、今度は金城の腕にしがみつくと
『ほらっ♪真ちゃんも笑って♪記念記念♪』
金城「……仕方がないな。」
そう言って一緒に写真を撮ると漆世は、満足そうに笑った。
『ねぇ真ちゃん……』
金城「なんだ。」
『また……ここまで来たね。』
金城「そうだな。」
『今年こそ…優勝しようね。』
金城「そのつもりで俺は最強のメンバーを作った。優勝し、お前も表彰台に立たせる。」
『約束?』
金城「あぁ……約束だ。」
漆世は金城に小指を差し出すと金城と指切りをした。子供の頃からしてきたように……この日を1年…どれ程待ったか。
すると目の前にいた小野田が倒れ他チームの選手が手を貸してくれた。大丈夫かと声をかけられ小野田は
小野田「はいっ!!ボクはテッペンを目指すのです!!だだから大丈夫です!!」
『♪』
小野田の言葉に漆世は微笑む。本当に可愛い後輩だ。一度転けたら緊張もおさまったのか先程とは比べ物にならないほど落ち着いた表情だった。寒崎が1年の3人にボトルなどを渡すと声をかけコースから出た。漆世は小野田に背後から近付くと
『わっ!!』
小野田「Σヒイッ;!!!!」
『あはは♪驚いた?坂道君♪』
小野田「姫先輩;!!」
『ねぇ坂道君?君はこう言う場は初めてでしょ?だからね……今日と言う日を思う存分楽しみなさい♪こんなに楽しいことはそうそう有るものじゃない……だから坂道君は思いっきり楽しんで♪』
小野田「っ──……はいっ!!」
漆世は、そう言うと小野田の頭を優しく撫でコースの外に出る。残り一分…間もなくスタート。
本当に良いチームだ。小野田、鳴子、今泉、巻島、田所、金城……誰が欠けてもこのチームは出来なかったと思う。小野田が羨ましい……初めて走る公式のレースが皆の憧れるインターハイの舞台で最高のメンバーと一緒に走れる……
『本当に……妬けるわね…』
スタートです。と音声とピストルが鳴ると先頭の方が動き出した。小野田は感じているだろう…皆のピリピリした空気や緊張感を肌で……大衆の波に乗れば押され引っ張られ全体が大きな生き物のように動いていく。
最初の二キロはパレードラン。二キロ先の湘南公園陸橋辺りからサバイバルだ。今日一日目のコースはクライマーにとっては我慢の区間だ。ほぼ平坦が続くコース、一日目のゴールは芦ノ湖だ。
スタートパレードが終ると先導している審判車から旗が振られる…それがスタートの合図となり信じられない程速度が上がる。そして各校のスピードマン達が己の技と誇り、勲章を賭け一気に走り出していく。
『純ちゃん♪どう思う?』
手嶋「そうですね…まだ出ないですね?」
『その意は?』
手嶋「目立つからです。しかも二人…」
漆世は手嶋のその答えに微笑むと手嶋の頭を撫で
『きっと迅ちゃんの事だから…最後尾が後ろを振り返ってもう来ないって思ったら出るでしょうね?』
手嶋「そうですね。総北が最後ですかね?」
『……多分、箱学のスプリンターがいるわ…』
それにきっと……その言葉は誰にも聞こえることはない。ただ漆世は願う、総北がスプリントリザルトを取ることを漆世は自身のバイクに他のメンバーは寒崎兄の車に乗り込むと給水ポイントに先回りする。
順位は戦略を動かす、最初のポイント最初のリザルトで一位をとれば精神的アドバンテージを得ることになる。このチームには敵わないと思わせることで全体をコントロールしやすくなる。だから各校そこには、トップスプリンターを送り込むのだ。まさに戦略。だが彼等スプリンターにとってはチームのためであり自分のためのものでもある。称号…目の前の選手をくらい一メートルでも十センチでも前に出るゼロコンマの数秒で一瞬の空気と瞬発力で自分の一番有利なポジションを獲る、反射神経で戦況を読みトップでゴールを狙う。スピードを追い求めて走る彼らスプリンターにとって一番欲しいものは誰よりも速くそして負けない。
再送最強の称号
『迅ちゃんも鳴子ちゃんも喧嘩しながら走ってるんだろーなー……』
漆世は一人バイクに乗り、そう呟く。お互いが一位を獲るために走っている。風邪避けとかそんな戦略なしでガンガンぶつかってそうだ。だが二人は早い…お互いも競争相手であるから…絶対に前を走らせたくないから例えチームメイトでもスプリンターとはそう言う生き物だから。
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