*弱虫ペダル*

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インターハイ。ロードレース男子二日目───ゴールアーチの幕は昨晩のうちに付け替えられ、ここ箱根町の国道1号線。1日目のゴール地点からスタートする。スタート直後から急行肺のつづら折りを登り箱根峠を越え標高846メートルを一気に海まで下る。平坦道に入ってからは国道1号線をひた走り139号を山に向けて登る。今大会3日間中最も長いステージである。










漆世は選手の補給食などを準備し、バイクのメンテを施していた。






『公貴ちゃん、そっちはどう?』

古賀「姫先輩、終わりました。」



2年の古賀公貴と漆世は選手のバイクを最終調整していた。暫くすると選手達が続々とスタート地点に集まる。今日も良い天気だ……予想以上に過酷なレースになる。そして脱落者も出るだろうと漆世は思っていた。







《間もなくインターハイ、ロードレース男子二日目スタートします。》



漆世は一番前に並ぶ金城に微笑みかけ頑張れと口パクで言う。すると、金城は漆世を、見て頷く。スタートの合図が鳴ると御堂筋、福富、金城の3人が先に出て次に荒北、今泉と着順でスタートしていく。小野田達が出るのは金城達が出て3分40秒後だ。









坂道「鳴子くん!!もう一回最後に…根性注入!!もらえるかな…!!」



坂道が付き出す拳に自身の拳を合わせる鳴子。





鳴子「気合い入れるで!!泣いても笑っても今年のインハイの二日目は一回コッキリや小野田くん!!」

坂道「うん!!」



始まる!!100q以上の長い戦いのステージが!!






金城達がスタートし荒北、今泉がスタートする。スタートして少し行った場所に居た漆世は今泉と目が合うと





『俊輔!!貴方なら絶対に大丈夫!!真ちゃんをお願いね♪』

今泉「はいっ!!」








まだ少し揺らぎがあるようだがそれを無くすのは自分しだい……だが漆世は今泉なら出来ると信じているのだ。














─────………



出発する前、総北のテントでは金城が皆にオーダーを発表していた。






金城「いいかオーダーだ。二日目は最初に短い登りと長い下りはあるが基本的に起伏の少ないロングステージだ。おそらく相当がまんのレースになる。他のチームは脱落者も出るだろう。ロングステージでは6人全員が固まってローテーションしながら走るのが一番安全でかつ効率が良い。今泉はスタートすぐに俺に追い付き前に出てサポートを頼む。」

今泉「はい。」

金城「そして小野田。」

坂道「は;はい。」

金城「過酷だが……頼むぞ。」

坂道「はいっ!!」




スタート直後、鳴子、田所、巻島全員を引っ張り峠を登り俺と今泉になるべく早く追い付け!!













それが小野田へのオーダー。6位以下がスタートし漆世の前を通過する。通過間際に"仲間を信じて!!"と声をかけ彼等の背を送った。どんどん先に行く総北メンバーに漆世は眩しそうに目を細め






『何も無ければ良いんだけど……』









嫌な予感が胸を過る……その不安を拭いきれないでいた。そしてその予感は的中する……小野田達は皆、走っていった。だがスタート地点に一人……田所がいた。






『まさか;…………』






何とか走り出したものの漆世の目には明らかに様子がおかしいのがわかった。盛大に舌打ちをすると苛々とした様子で漆世は愛車のワルキューレムーンに股がった。


























──…────……




よし見えねぇ…行ったみたいだな。余計な気ィ回す巻島のことだから途中で待ってるなんてバカなことしてんじゃねーかとも思ったが大丈夫……行った!!………行ったんだな……本当に……チームを頼んだぜ…巻島ぁ……!!俺のハートももっていけ…!!











一人か…ホイールのラチェット音もギアをシフトする音も息づかいもチームの声も聞こえねぇのか…何もねぇつのは寂しいもんだな…





弱気になる田所は自身の顔を叩いた。進めとペダルを漕ぐが力が入らない。すると







「「田所さん!!」」

田所「手嶋……青八木……;!!!」

「「田所さん;!!」」

手嶋「だ;大丈夫ですか;!!体調…悪いんですか;!?」
青八木「大;……大丈夫ですか;」

田所「おめぇら;……」








体調が、悪い田所を二人は押そうとする。頂上の峠まで行けばあとは長い下りソコまで粘ればチームに追い付く。二人の言葉が田所に響く。




手嶋「追い付いてください田所さん!!」
青八木「田所さん!!」
手嶋「皆をお願いします!!チーム総北にはあなたの力が必要なんです!!」



二人で田所を押すだが





『純!!一!!迅から手を離しなさい!!』

手嶋「姫先輩;!!」


『短いプッシュは認められるけど長いプッシュはペナルティを取られるわ。』




その言葉に二人は田所から手を離す。すると丁度審判車が通る。そして左に避けるように言われる。それはメイン集団が通るから………田所達の目の前を集団が通っていった。その光景に絶望する田所。












『迅……走りなさい。走り出しなさい!!!!貴方の折れかけた心を拾ってくれた純と一の為にも!!!!寒崎さんは迅に…気持ちでは誰にも負けるなと教えたはずよ!!!!まだ諦めるには速いわ!!』












田所は走り出した。その背を見送ると漆世は手嶋と青八木に近づきふたりを抱き締めると




『怒鳴ってごめんね?……純も一も良くやってくれたわ?貴方達のお掛けで迅はまた走り出せた。あとは仲間に任せましょう。』

「「姫先輩……」」








きっと彼ならやってくれるはず。そう信じて漆世達は田所のを見送る。





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