*弱虫ペダル*

□*03
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福富は徐々に金城のプレッシャーに押されていた。仲間のためにあきらめない金城。今まで一人で戦ってきた福富には解るまい…彼等の執念を…









残り四キロを過ぎ峠を越えれば後は下り…福富のシフトチェンジの瞬間…福富を追い抜いた。そのまま金城は走り抜ける、一瞬遅れ福富は金城を追うが焦りのせいかシフトミスをした。どんどん引き離していく金城に福富は必死で追い付こうとペダルを回す後少し…後少しで金城に追い付く…光の先に金城が……そして













━━━━━バチンッ!!!!




ぐらっ……





福富「うおっ;!!」







福富、金城……二人の世界が反転し体が宙に浮いた。






福富「金城……すまない。オレは……ゴールを…;」









ドシャッと金城の体が道路に叩き付けられ勢いを殺せずそのまま道路の上を滑ると金城の体はガードレールに叩き付けられた。









福富「金城ぉぉおお!!!!!!」







ガードレールが血で染まる。動かない金城をただ呆然と見つめる福富。だが少しするとズルズルと金城が起き上がる。その目はまだゴールを諦めてはいない…。






だがそれとは裏腹に金城の体は左の肋が折れ、皮膚を突き破ったのか左の脇腹から出血し、右膝は肉が抉られ所々から出血していた。それでも金城は自転車に乗る…何故なら…













金城「………オレは;……エース……だ;ハァハァハァ;|||絶対に……;!!!!あきらめない……!!」








ボロボロの体で金城は69位でゴールした。漆世はボロボロの金城に急いで駆け寄った。









『真ちゃんっ;|||大丈夫っ;!!』



金城「ハァハァハァ;………っ───……;」






涙を流す金城を漆世は抱き締めた。一体、金城に何が起きたのだ。






巻島「てっきり……;前にいると……;集団の中にいて…;追い抜いたのわかんなかった……ショ;」



田所「落車か大丈夫かケガは;!?」


金城「古賀を……;」

『ロードのメンテは任せて;!!それよりも今は自分の怪我を心配して!!』


巻島「そうっショ;自転車はどうにでもなるっショ;一体…;どお…;」


田所「どうしたんだよ体は大丈夫なのかよ!?」







どう考えても大丈夫なわけがない……腹部の出血量からして肋骨が折れ、皮膚を突き破っている。かなり酷い怪我だ。手で押さえ止血をしているのは正しい判断だ。だが急に田所が






田所「くそおおおおおおぉぉぉっ!!!!!!」

金城「すまない……;」



田所「今年は…今年は行けると思ってよ死ぬほど練習してよ死ぬほど回してよ!!オチは落車かよ!!」

『ちょっと;!!止めてよ迅ちゃん!!』

金城「本当に……すまない;」

巻島「田所っち言い過ぎっショ;!!」


「違う…」


田所が行き場の無い怒りをブチ撒けていると背後からそう声が聞こえた。そして、一同振り向くとソコには箱根学園2年オールラウンダーの福富がいた。彼もまた膝やら顔に怪我をしていた。漆世は直ぐに理解した。









福富「オレがジャージを引っ張って落車させた。すまなかった。」




福富はそう言い頭を下げる…巻島と田所は驚いた顔をしている……だが




田所「て…てめぇ……箱学の金城と前走ってた…福富…て……ハァ!?」


福富「すまなかった…大変なことをしたと思っている…オレは金城に抜かれて思わず手が出てしまった。自分の弱さが原因だ。残り………二キロだった……」




誰もが呆然とした。だが次の瞬間…





田所「ざけんなよてめぇごらぁっ!!!!!!!!」




━━━ゴッ!!!!!!!!





田所に殴られ福富は勢い良く殴り飛ばされた。ドカァァとすぐ後ろにあった建物の壁に叩き付けられた。




『止めなさい;!!』



福富「すまなかった。罪滅ぼしではないが……オレは明日のレースは棄権するつもりだ。」


田所「は───は───は───」

巻島「田所っち;!!」

田所「関係ねーよふざけんなよ!!それが箱学のやり方かよ!勝つためなら何でもヤンのかよ!見てねぇとこじゃそんな汚ねェ事すんのよ!!自転車は回してナンボだろ……車輪で勝負すんじゃねぇのかよ!!オレ達は……;オレたちはなぁ……;エースは、一人しかいねぇんだよ!!恵まれた箱学とは違うんだよ!!優勝するために……;どんだけ……;」





田所の気持ちは痛いほど解る……それに金城の気持ちも…漆世は田所に近づくと福富の胸ぐらを掴む腕を下ろさせる





『離しなさい……迅の言いたいことは良く解る…でもねこれ以上彼を責めてもリザルトは変わらない。』


金城「俺達がやるべき事は明日に備えてバイクを直し休むことだ。」


福富「!ま;まて3日目は無茶だ;!!出るのかその酷い怪我で;!!おまえはっ…;」


金城「ロードレースの全ての勝敗は道の上で決める。そしてその結果はゴールするまで誰にも解らない!!だったら走るさ…道の上に立って走り出さなきゃ、それは負けと同義だ。踏み出した1歩は小さくとも必ず積み重なる。例え今回勝ちがなくても…その時だした1歩は1か月後か2か月後か半年後か必ずカタチになる。だからオレはあきらめない……たとえどれだけの時間がかかろうともそれが1年後であってもオレは総北を優勝させるつもりだ!!」












強い……こいつ…



あの時感じたプレッシャーは…こいつの意思…!!オレよりはるかに強い

オレは…あの時、右手を出したのはそれは本能だったのかもしれない…体が敗北を認めたのか……金城真護








福富はそう思いながら3人の……金城の後ろ姿を見つめていた。そして










『はいっこれっ……』


福富「えっ;……」



急に表れた漆世に驚き漆世が持ってきた冷却用の氷をいつまでも受け取らない福富に痺れを切らした漆世は、ため息を1つ吐くと福富の、頬にピタッとくっ付けた。





福富「Σっ───……;」


『少し染みるかもしれないけど我慢して……少しでも腫れが軽い方が良いでしょ?…………ごめんなさいね…うちのメンバーが殴ったりして…』


福富「いや;……殴られて当然だ……;」


『そうね?私もそう思うわ?』



落ち着いた口調で話すが本当は腸が煮えくり返るほど怒っていた。だが田所のように頭に血が昇るタイプではなく冷静に淡々と怒るタイプの漆世。福富と漆世の間に気まずい空気が流れる…だが













『うちのエースは強いでしょ…福富君が来なかったらきっと一人で落車したと言い張った。でも真ちゃんがそんなミスを犯す筈がない……私には解る…』



福富「すまない……」


『貴方はスポーツマンとしてやってはいけないことをした。貴方はこれから……その事を背負って生きるのよ。その事を胸に抱えたまま1年を……私は貴方の事を許さない……だから1年後、インターハイでまた会ったときこの借りを返しに来るわ?それまで貴方達は王者でいなさい……貴方を殴るのは1年後に取っておくわ?……約束よ?………金城の事は私が支える。来年はもっと強いチームで貴方達に挑むわ……それまで覚悟していなさい。』




福富「っ───………;||||」





漆世の蒼い瞳が福富を射抜くように鋭く睨む……福富はその瞳に恐怖を覚えた。射殺す……とはああ言ったことなのだろうと思うほどに……





















━━━━━━━━━……………







金城「傷は癒えた……今年は必ず優勝するオレたちは……強い!!」


『certamente♪………今回の布陣は最高よ…これ迄にないほど…』










私は貴方達のサポートしかできない。だから私たちの分まで想いを運んでくれると信じている。



















来る期日……8月1日……インターハイが幕を開けた。
















end
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