*弱虫ペダル*
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漆世は一人、大分先のスプリントリザルトの位置までいた。
『悔しいけど二日目のスプリントリザルトも山岳リザルトも捨てるしかないわね………でも……ゴールは譲らない。』
何故、漆世はスプリントリザルトに居るのか。総北が出ないとなるとスプリントリザルトを競うのは箱学の新開と京伏の御堂筋と踏んだからだ。新開が前に進めたかを観るためにここにいた。
『勝負はギリギリって所でしょうね?でも翔ちゃん…性格悪いからな?』
相手の弱味に漬け込み傷をえぐる…本当に…
『性格悪いわよね♪』
──────………
箱根学園のゼッケンには並びがある。1はエース。2はアシスト。3はエースクライマー。4はエーススプリンター。新開隼人は箱根学園で最も速い男、つまりこのインターハイで最も速い男。
新開と御堂筋が飛び出す。五キロ先にあるスプリントリザルトラインを目指して、両チーム プライドをかけた闘いになる。
新開が先行するが直ぐに御堂筋は追い付く。目の前には先導車、自転車で二人は抜くスプリンターの勝負は本当に速い者だけが勝利する。御堂筋に差をつける新開、箱学の四番は最速の数字。新開はそれを背負って走る、だが御堂筋は新開の後ろでうーうーと叫び始める。
御堂筋「うーうー」
新開「なんだいそれは陽動作戦かい?それともサイレンか!!」
御堂筋「ウーサーギーおーいしーかーのーやーまー……ん…あれ?うさぎは美味しいんやったっけ?引き殺して食べたんやっけ?毛むいて骨もって肉食ったんやろぉぉぉ!!」
動揺し、パワーバーを落としかける新開。
新開「……ウワサ通りだな御堂筋くん。いろいろ敵のデータは調べているらしい…けどそれで実力差は埋まらないよ!!」
だが御堂筋の心理戦はまだ続く、新開が前を走る理由、そして敵の左側を抜けない新開をジワジワと追い詰める。
『隼人くん………貴方なら出来るわ…』
残り一キロ。右は完全に塞がれている。選択肢は二つ…このままついていって2番手でラインを越えるかムリヤリ左側から行ってぶち抜くか…
寿一……尽八……靖友…
新開「だよなぁ…1個目の選択肢は………当然っナシだよな!!」
左を抜こうとするが悪いビジョンが浮かびブレーキをかける。抜けない…けどここで退くわけにゃいかねぇんだ!!………左……抜く……左から!!
新開「御堂筋くん……箱根の直線にさ………鬼が出るってウワサ…知ってるかい?」
御堂筋「……?は?」
新開「そうだ……もう1年以上昔のウワサだからなおめぇは知らねぇだろうな?」
新開のプレッシャーが変わる。何かが来る……
新開「あるるるるるるぉぉお!!」
鬼の形相で走る新開のスプリント見るの久しぶりだ。ただ事ではないと御堂筋も察知しスピードを上げる。
新開「どうした御堂筋!!遅ぇーぞカメヤロウ!!遅ぇ遅ぇ遅ぇっ!!左から抜けねーだぁ!?誰が決めたそんなこと!!抜いてやるよ左がら空きにしてくれてアリガトよ!!」
ブレーキに手をかけたがグリップを握る。
すまねぇウサ吉……俺は左を抜くぜ!!前に進むしかねぇんだ…それしか脳がねぇんだよ。おまえの母親の命を奪ってそれでも1歩踏み出さなきゃ歩き出さなきゃ俺はここにいられねぇんだ!!
新開「おおおおおおおおお!!」
寿一、尽八、靖友……心配かけたな………長い間待たせてすまなかったな……俺は…負けない。俺は箱根学園のエーススプリンターだ!!
『あら♪隼人くん………相変わらず格好いいわね。貴方の全力スプリント……見れてよかったわ♪』
ウサ吉だって怨んだりしないわ…
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