*弱虫ペダル*

□*08
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『ごめんなさい;何だか急にっ────;えっ………;』

東堂「っ───………;///」














腕を引かれ………漆世は東堂の胸に抱かれていた。驚いた漆世は東堂を見ると





東堂「我慢をする必要はないぞ。泣きたいときは泣けば良い……今は俺しかいないからな。」

『尽八君………』





東堂の言葉に甘え、涙がおさまるまで漆世は東堂の胸で泣いていた。














暫くし泣き止むと心配そうにもう大丈夫なのか?という東堂に漆世は笑ってみせる。





『急に泣いたりしてごめんなさい。もう大丈夫よ…………何て言うか……私…弟が居なくなってからたまにふとしたときに涙が出ることがあるの…そう言ったとき大体は真ちゃんが傍に居てくれて尽八君みたいに抱き締めてくれるんだけど……』


東堂「家族が心配なのは当たり前だ。漆世は一人で頑張っていると思うぞ?」

『うん………ありがとう。……私の弟ね?ちょっと極端な所があって不良の事や真ちゃんの怪我の事でスイッチが入っちゃって1年の終わりに修行に行ってきます。両親とちゃんと連絡のとれる場所にいるから心配はしないでって手紙を置いて急に居なくなったの………何も言わないで出ていったら心配するに決まってるのに…』






弟を懐かしむように話す漆世。東堂は黙って話を聞いていた。




『小さい頃からずっと私の後をつけて回って……本当に可愛くて仕方がなかった……あっ今でも可愛いのよ?私の弟は……パパとママが仕事で海外に行かなきゃいけなくなったのが中学2年の時、でも日本に残るって二人でずっと暮らしてたの。イベント事の時には両親は必ず来てくれたわ。だから二人でも寂しくなかった。でもね………一人は寂しいの……真ちゃんや皆が傍にいてくれたから何とかやってこれたけどやっぱり弟の事が心配だし大切な家族なんだから会いたくないわけ無いのに……』


東堂「漆世………──漆世のこの気持ちが伝わって一秒でも早く帰ってくると良いな?」


『尽八君……そうね。うん。早く帰ってきたら良いな…』





そう言う漆世は今は何処に居るか解らない弟を思い空を見上げるのだ。







『あら?もうこんな時間なのね?ゴメンね尽八君、遅くまで付き合わせて。』

東堂「いや普段、こうやって漆世と話す機械が無いからな?学校生活の話も聞けて楽しかった。何よりも漆世を慰める大役が出来たからな♪役得だ♪」


『あら?ならば私も沢山のファンがいる尽八君に抱き締められるなんて役得ね♪それに私も尽八君と話せて楽しかったわ♪今度箱学の皆と何処かに出掛けない?あっ♪ディズニーとかどう?うちの皆も誘って♪』

東堂「それは楽しそうだな♪是非行こう。」



二人は立ち上がると外に出る。空は星が綺麗に輝いて美しかった。









『星が綺麗ね尽八君♪』

東堂「そうだろ?こっちの夜はいつもこんな感じだぞ♪」



少し肌寒いのか漆世は尽八の腕に抱きついてきた。漆世の柔らかい胸が尽八の腕に押し当たる……胸が高鳴るのが解った。自分の血が沸き上がり頬が染まるのが……それに漆世からは洗いたてのシャンプーのいい香りがした。その香りに尽八は無意識に漆世の髪の香りを嗅いでいた。





東堂「漆世は………いい香りがするな。」

『?そうかしら?……でも尽八君もいい香りがするわよね?』




そう言い漆世は自分より背の高い尽八の首元の香りを嗅ぎ顔をあげた。すると尽八も丁度下を向き、尽八の顔がとても近くにあった。






尽八は漆世の蒼い瞳から視線を反らすことが出来なかった。その神秘的な蒼に尽八は引き込まれた。あと少し……あと少し顔を下に下げれば漆世の唇と触れ合う……






だが尽八の理性を抑えたのは今日見た漆世の涙、新開にキスをされ泣いた漆世を思いだし踏みとどまった。漆世に泣かれるのは正直、しんどい。何人もの女性の涙を見てきた尽八だが漆世の涙は見たくないのだ。漆世には絵顔が似合う……漆世の笑顔はまるで花が咲いたように可憐だ。尽八は漆世の笑顔が好きなのだ。








尽八は漆世から視線をはずし夜空を見上げる。




尽八「明日は最終日だ………最も過酷な日になるだろう。だが俺達、箱根学園は誰にも負けない。俺達は王者箱根学園だからな?」


『フフっ♪言ってくれるわね?そうね…貴方達は確かに強いは……それに京伏も……でも勝つのは私達…千葉総北よ。』








二人は敵どおし……自転車を下りれば友とも呼べるだろう…だが明日は敵だ。二人にとって……選手達にとってもっともシンプルで最も重要な事。







お互い風邪を引くと困るとその日は別れた………漆世は楽しかったな〜と旅館に帰り金城達に尽八に会ったことを話した。




東堂もホテルに戻ると漆世の事を思い出し頬を染めたのだ。










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