*弱虫ペダル*

□*09
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だが正直……口には出さなかったが漆世は今朝から嫌な胸騒ぎがしていた。この不安がなんなのか……この嫌なイメージはなんなのか…悪い予感が的中しなければ良いと心から思った。スタートした皆の背を見送ると漆世は胸の前で手をくみ祈るように








『神よ……どうか彼等に災いがないことを……』











そう心から願った。だが漆世の悪い予感は的中した………金城がリタイアしたと報告があり、医務用テントに運ばれたと連絡があった。漆世は皆をゴールまで行かせ一人は金城のいるテントに向かった。













─────────…………













『はぁっ;はぁっ;はぁっ;はぁっ;……』




信じられないくらい足が重かった。前に足を出しているはずなのに前々進んでいる気がしなかった。……医務用テントには金城の他に鳴子も運ばれたと連絡があった。早く……早く彼等のところに行かなくては……目の前が真っ暗になる。







そしてあの時の過去が甦る………









「お姉ちゃんっ;助けてッ;!!」

『漆馬ッ;!!離して!!漆馬を離して!!』



伸ばした手は小さな弟に届くことなく二人は引き離される……ソコから悪夢が始まった。















ぐらつく視界を何とか保つとテントに漸く着く…中に入ると横たわる金城、鳴子がいた。その瞬間…漆世
はヘタリと座り込む







『真ちゃ……ん……鳴子………ちゃん……』

金城「漆世……?」



漆世の声がし起き上がる金城。すると地面に座り込む漆世に金城は内心、しまったと思う。








金城「漆世;俺は大丈夫だ;!!だから落ち着くんだ;」

『何が…落ち着けよ……;』

金城「………………;」

『心配ないって言ったじゃない……膝は平気って言ったじゃない!!』

金城「すまない;……」



『どおしてよ……どおしていつも私に心配かけるのよ!!私ばかり置いていって……待つ者の気持ちも解ってよ!!嫌いよ……真ちゃんも漆馬も大嫌い!!!!于わぁぁぁぁあ』









大きな蒼い瞳からボロボロと涙を溢す漆世。大声で泣き涙は地面に沢山のシミを作った。金城はそんな漆世を優しく抱き締めると







金城「すまなかった漆世……お前を心配させたくなかった。それに俺も漆馬もお前を一人にするつもりなんかない。」

『じゃーなんで!!何で私に黙ってるのよ……何で何も言ってくれないの……そんなに私は頼りにならない?そんなに信用できないの?っ……───もう無力なのは嫌なのよ……助けられないのは嫌よ…ボロボロな貴方達を見るのはイヤなのよ……』






泣き出す漆世を抱き締め金城は、何度も何度も謝る。ごめん…と漆世を泣かしたのは自分だが…漆世が泣く姿を見るのはとても辛い。そしてそんなやり取りを見ていた箱学の荒北はゆっくりと起き上がると





荒北「あんま他人の事に口出すのは趣味じゃ無いんだけさァ?漆世チャン……金城は漆世に泣いてほしくないんだヨ。心配かけて泣く漆世チャンを見たくないんだと思うよォ?それに男って大切な人に心配かけたくないし弱い姿を見せたくない生き者だろォ?男ってバカだから……嘘を着くつもりがあったわけじゃ無いと思うよ。あんだけハードなレース…何があるか解んないものだろ?最初は平気でも次第にみたいなさ?だから漆世チャン…許してあげなよ?」

金城「荒北……」
『靖友君………』




まさか荒北がそんなことを言うとは思っていなかった。だが荒北の言葉を聞いて冷静になった自分がいた。納得まではいかないが何となく…許す気持ちになった。





漆世ははぁー……と溜め息を吐くとキッと金城を、睨み付け






『心の準備は出来てるかしら?』


金城「………;あぁ;」


次の瞬間、金城の頬に漆世がビンタをした。バチンッと良い音がテントに響き、その場にいた鳴子、泉田、荒北はヒィッ;|||と一部始終を見ていた。叩かれた本人の金城は痛みに顔を歪めていた。





『これで許してあげる。……次はただじゃおかないんだからね?』

金城「肝に命じておくよ;」







そう言う金城を漆世は抱き締めると







『心配したんだからね…』
金城「ああ」
『去年みたいな真ちゃんを見るのはもう二度とごめんよ?』
金城「ああ」
『頑張ったね……貴方の思いは…いいえ……貴方達の思いは坂道君が運んでくれるわ?』
金城「本当に……漆世が見つけたクライマーはよく働く。」
『フフっ♪きっと最後は山岳くんと坂道君の対決になるでしょうね♪』
金城「漆世が言うならそうなるのだろうな?」



『さっ♪じゃー今からマッサージしてるあげる♪真ちゃんの次は鳴子ちゃんね?その次は泉田君で最後は靖友君ね♪』
鳴子「すんません♪」
泉田「あのっ;僕まで良いんですか?」
『フフっ♪何言ってるの!?自転車に乗ってなければ私達は敵じゃ無いわ?それにうちと協調もしてくれたんだし…荒北君に至っては坂道君を集団から引っ張ってくれたしね♪』

荒北「小野田チャンだけ置いてくれば良かった…」

『フフっ♪靖友君て優しいからね♪』



そう言い漆世はマッサージをするために着ていたTシャツを脱ごうとすると




荒北「Σ何やってんだ;///」
泉田「Σアブッ;///」

『え?暑いから服脱ごうとしてるのよ?』
金城「漆世………;俺は慣れているが他の者はそうではないだろ?」
鳴子「姫先輩ッ;下着見えとりますよ;///」



黒の下着らしき胸を隠す物が見え、荒北、泉田、鳴子は顔を真っ赤にして焦っていた。だが





『あぁ……これチューブトップって言って下着じゃないのよ?キャミソールに近い物ね?何?これを気にしているの?こんなの水着と一緒じゃない!?それよりも私は暑いのが嫌なのよ!!つべこべ言わずにされるがままになりなさい♪』






そう言って漆世は次々とマッサージを施していく。ラジオから流れる試合中継を聞きながら。










━━━━━━…………









漆世のマッサージは思いの外上手であんなにも重かった体がとても軽くなった。そんな漆世に泉田はとても感心していた。













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