novel

□そういう人間
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「う〜ん。これはさすがに見つかったら怒られるかも。」
ボンゴレ十代目をベットに寝かしながら、スパナは考えた。
いくら自分が派閥にとらわれない奴だとしても、
いくら自分が同じ技術畑出身の入江氏から信頼されていても、
敵・・・しかもボスを助けたとなっては、いくらなんでもまずいだろう。

「まあ、仕方ない。あの技の完成を見てみたいからな。」
それでいいのかという声がきこえてきそうだが、もともと自分はそんな人間だ。
このファミリーにいるのだって、好きに機械をいじれる金と機材が提供されるから。
結局自分は、目の前のものしか目に映せないようなそんな人間なのだ。

大丈夫。ばれないためにやれることはした。
この部屋には誰も出入りしない、
よほど疑い深い者が念入りに自分の周りを調べない限りまず見つからないだろう。
さすがにボスまでこの話がいくと、誤魔化しきれないだろうが・・・

頭の中で自分がやった行動にどこかミスがなかったかもう一度考えながら、スパナはボンゴレの顔を見た。
「(このままじゃ、風邪ひく・・・)」
戦闘中、用水路に落ちたのだ。当然服もびしょぬれ。
仕方なく、彼の服を脱がせて乾かすことにした。
水を含んだそれは重く、脱がしにくかった。
もとがシンプルな服で助かった。
これが他の隊員のような、奇妙な服だったら、もっとぬがしにくかっただろう。
そしてようやく上2枚を脱がし終えたとき、腕が止まった。

白い。
そして細い。
思わず呆気にとられた。
自分達西洋人も十分白いが、それとは違う白さがあった。
女のように脂肪がついているわけではない、細さがあった。

「・・・やばい。」
触れたい。この少年に。
抱きしめて、自分の名を呼んで欲しい。
いっそこのままここに閉じこめておくのはどうだろう。

この少年を手放せば、もう手に入れることは不可能だ。
だってこの時代の彼は、既にうちのボスが殺しているのだから。
この少年も、いずれは自分が依存する時間軸へと帰っていくだろう。
それが悔しい。溜まらなく。

そして愛おしかった。


「(末期だな・・・こりゃ・・・)」
相手は男だ、うん。それは分かってる。
どんなに白くて細かろうが、男だ。
法統は間違ってるかもしれない。いや、間違ってる。
でも、仕方ないのだ。


あの用水路で、澄んだ炎の瞳を見た瞬間から、自分は彼に魅せられていたのだから。


うん。そうだ仕方ない。
起きたらまず、自分の名前を呼んでもらおう。
いつかのためにとっておいたクールな東洋文化である漢字の名詞を差し出して。
ならばはやく起きないかな。
あの透き通るような声をもう一度、マイク越しじゃない直でききたい。
そうだ日本茶も用意しよう。
ここの連中はやれコーヒーだのやれ紅茶だので日本茶の良さを理解してくれなかったが、
日本で生まれ育った彼ならきっと理解してくれるだろう、と。



はやく起きてくれ、と彼の唇に自分のそれを重ねた。


仕方ないのだ、結局自分はそういう人間なのだから。






そういう間。
(うん、そうだな。仕方ない。)



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