novel
□I Loved You...
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「あいしてる。」
もうその言葉は届かない。
音にすれば、何かが変わると思ったのだ。
けれど現実はそう簡単には変わってくれなくて。
目の前にむなしく広がる緑の草原に、あの子の姿はなかった。
「あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、
あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる、あいしてる。」
どんなに音にしたって無駄だ。
届かない。届かない。
だってもう、全てが遅すぎたのだから。
この気持ちに名前をつけるのも、それを告げるのも。
すべてが、おそすぎたのだ。
ふと、雨が降ればいいと思った。
これでもかというくらい雲一つない快晴の大空に、腹が立った。
何故、自分の心の中は大雨なのに、この世界はこんなに青いのか。
何故、あの子がいなくなっても何事もなかったかのように時が流れるのか。
拳を握りしめ、昔はあんなに大好きだった大空を睨んだ。
でも別にそんなこと、どうだっていいのだ。
これでもう終わりにするのだから。
これでもう忘れるのだから。
ゆっくりと口を開いた。
「あいしてた。」
行き場のない言葉はあの大空にはじけて消えていく。
同時に、この想いも消えてしまったような気がした。
I Loved You...
(あいしていたんだよ、きみを)
(その言葉は、諦めた恋を意味する)
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