novel

□その瞳はもう自分を映さない
1ページ/3ページ


自分は悪くないと思う。
そうだ、これは全て彼が悪いのだ。
そう自分に言い聞かせて、重い鉄の扉を開けた。



「お目覚め?」
電気もなにもない暗い部屋。
その奥には、その場には不相応な小さな少年が繋がれていた。
両手に手錠を掛けられたまま、縄で吊され、口にはタオルを押し込まれており、見ていて痛々しい。
スパナが入ってきたことが分かると、彼は顔を上げ懇願するようにうなり声を上げた。

「あんたが悪いんだよ、ウチから逃げだそうとするから。」
「う―――っ!う―――っ!」
「折角助けてあげたのに。」

今まで自分を見てきた優しい視線とは違う、まるで獣のようなそれに綱吉の目尻には既に涙が溜まっていた。
(こわい!助けて!!助けて!!)
しかし何か叫ぼうにもタオルが邪魔で、うーうーとしか言えず、それがまた恐怖感を生んだ。
「ああそうだ、これじゃあなにも話せない。」
それに気付いたスパナはそう言ってスパナは綱吉の口に入れていたタオルをとってあげた。
「ぷはっ!……あっあっス……スパナぁ……」
何度か咳をして、まだ口の中に残っている繊維をはき出す。
そのまま下のものもとってくれと目で訴える綱吉を、スパナは冷めた目で見ていた。

「そっちはまだとってあげない。」
「そん……んあ!……なあ……」
「ちゃんと感じてるくせに。」
スパナの目線の先には、綱吉の中から伸びているコードとその先のリモコン。
鶉の卵を少し潰したしたような形をした玩具は、くぐもった音をだしながら彼の中で振動している。
「あっふああっん……」
目盛りは“弱”でとまっているが、それでも長時間綱吉を蝕むには強すぎるくらいだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ