短い読み物。

□静寂とぬくもりと。
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俺達は空を見上げている。消灯時間が過ぎた夜の屋上。寝転がった方がよく見える。
城から明かりが消えた分、さっきよりも星がよく見えた。

どれくらいの時間眺めているんだろうか?
さっきから彼女と全く言葉をかわしてない。でも、気まずいとか、何か喋らなきゃとか、そういう気持ちは無くて、何かこの静かな二人の時間は嫌じゃなかった。



「ねぇ、シリウス」


「ん?」


彼女がこちらを見て口を開いた。いつもは子供っぽく笑うのに月の光を浴びた笑顔はやけに艶っぽい。
その違いにどきっと心臓が鳴る。



「私あなたに好きって言ったかしら?」


「・・いや、聞いてないな」


「そぅ。」


それだけ言うと、視線を戻して空を見上げた。
言った言葉の割りにそっけない。
でも、彼女が言葉を続けなかった理由を知っている。
暗くて分からないとでも思ったんだろうか?
彼女の頬が赤く染まっていた。頬が思わず緩んでしまう。



「なぁ」


「何?」




「いつもお前の顔を見るとキスしたくなる、って言ったっけ?」


きょとんとした顔が目の前にあった。
さっきよりさらに頬が色を帯びていく。少しして彼女がゆっくりと微笑んだ。



「知らないわ」


照れた笑顔もかわいい。
彼女の頬に手を添えて近づくと静かに唇を重ねた。



離れた後も重ねた部分が熱い。その熱が頬にもうつり、それが顔全体に広がった気がした。
きっと他人の事を言えない。赤いんだろうな、顔。

恥ずかしいのもあって、お互い目を合わせてくすくす笑った。


星が瞬いている。
風の音も木の葉のざわめきも今はしない。
不思議なくらいとても静かな夜だった。


いつもならこんな静かな時間は落ち着かない。ジェームズと一緒に花火でも上げるか、糞爆弾でも爆発させてこの静寂を破りたくなる。
でも今夜は・・嫌じゃない。

それはただ彼女が隣にいるだけなのに、ただそれだけなのに、ひどくこの静寂が心地よい。




「好きなんだ」



君の事が、君と過ごす時間が。





優しい微笑みを浮かべた君は小さく頷いた。
瞳に映り込んだ星は空に浮かぶ本物よりも美しかった。




静寂とぬくもりと。





080616

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