ナナミ「ゲッホ!ゴホ、ゲェェッホ!!」
3人の大切なこの家の主、ナナミが風邪をひいて寝込んでしまった。
暖かい季節には不釣合いなほど布団を重ねて、ナナミは苦しそうに咳をする。
ふいに優しい手つきで額に触れられる感覚がして、ナナミはうっすらと目を開けた。
幸村「・・・・・・ナナミ・・・」
かすれたような細い声で彼女の名を呼ぶのは幸村だった。
ナナミ「・・・ゆき・・・むら・・・?」
ナナミは慌てて身体を起こそうとすると、阻止されてしまった。
幸村「だめです、寝ていてください。」
ナナミ「・・・幸村、いつからいたの・・・?仕事に行ったんじゃ・・・なかったっけ・・・?」
幸村「あ、いや、・・・ちょっと・・・・・・。あの、早退してきました・・・。」
ナナミ「うそ・・・お店は・・・大丈夫なの・・・?」
幸村「最近従業員が増えてきたでしょう?人が余っていたようでしたので、店長に話してお休みをもらったのです。」
ナナミ「そんな・・・!でも・・・」
幸村はクスリと笑って、もう一度ナナミの額をそっと撫でた。
幸村「私の心配なんていいんですよ。
それより、あなたが心配で、私は仕事にも手が付けられなかったんですから。」
ナナミ「・・・・・・/////」
ナナミの頬が更に赤らんだのは、熱だけではないだろう。
幸村「みんな心配していましたよ。ナナミが元気じゃないと、お店の士気も上がらないみたいですから。」
ナナミ「・・・そんなことないよ、ケホ」
幸村「それに・・・」
ちゅっ
幸村は顔を近づけて額にキスを落とす。
幸村「私も・・・。私の元気も、あなたに支配されているんですから。」
ナナミ「・・・!?!?」
幸村「あなたが元気じゃないと、私は・・・。」
ナナミ「//////」
幸村「・・・・・・はぁ・・・////何を言ってるんだ私は・・・。すみません、なんでもありませんからね!
とにかく、早く元気になってくださいね!////」
幸村は慌てて視線を外して、カチャカチャとお盆を持ち上げた。
幸村「お粥、作ったんです!」
ナナミ「!」
幸村の手にはほかほかと湯気の立ちこめる、とても美味しそうな卵粥があった。
幸村「これ食べて、しっかり休養してくださいね。」
ナナミ「・・・////」
幸村は世話上手で、気遣い上手で、なんていうか、気を抜くと完全に甘えてしまうのだ。
彼のペースに乗せられる。それが少しだけ怖い。
でも・・・・・・
ナナミはうっすらと唇を開けて、幸村をちらっと見上げた。
幸村「クス。もちろんですよ、食べさせてあげますから。
ほら、身体起こしましょうか。」
こんな時くらいは、甘えてしまってもいいよね?
自分よりも一回りもふたまわりも大きな男が、大きな手でスプーンを握って、一生懸命息を吹きかけ必死で食べさせてくれる姿を見ると、
風邪であることも忘れて幸せを感じてしまうのは、ナイショの話し。
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