PLAYS

□《生きてる証拠さ》
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*


 とろとろと、生あたたかい沢木の口の中で僕の舌が動く。沢木の舌はあまり動かない。ただときどき僕が離れようとするとしつこく付け回してくる。おかげで先程から鼻から息が抜けて、間抜けな音が出てしまう。今話せるとしたらきっとこう言うだろう。息をさせろ、ばか。
「んっ、ふ……」
「あ」
「あ?」
 が、突然離されたならば、理由に思い当たらず不安になるのも仕方がない。肩で荒い息をしながら僕は沢木を見つめた。沢木も僕を見つめた。ふたりの間、どこか不思議な空気が、流れた。
「なぁ、蛍」
「なっ、何」
「お前、コンドーム持ってるか?」
「ばっ……!」
「ば?」
「さ、沢木がコンドームって……っ」
「うるせー!俺だっていっぱいいっぱいなんだよ!!」
 怒鳴ったことで、沢木の息も僕と同じく荒くなる。なんとなくいい気分、なのだが、逆ギレされたことに変わりはない。もっともここでも、ちょっとかわいいかも、なんて許してしまう僕なのだった。今までの18年間プラスアルファの中で、ずっと沢木を側に置いて甘やかしてきたツケが、今頃回ってきたような気分。
 そしてそんなことを考えながらも、僕はまた沢木を甘やかしてしまうのだった。
「………………」
「……ごめん。続き、しよっか」
「ん」
 ただ、キスだけじゃあ埒があかないのもまた確かで。
「……あのさ、沢木?」
「何?」
「このあと、どうしよっか」
「んー……じゃあ、ちく」
「わーわーわー!!!」
 そういうわけで、さっきから僕は怒って喚いてばかりいる。今までに失敗してきたぶんのしつけを取り戻そうとするみたいに。
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