PLAYS

□《生きてる証拠さ》
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 くちゅ、とか、ぴちゃ、とか、そういった類の音、が部屋を支配しはじめた。沢木のつむじが、僕の目の前にある。つまりはそういうことだった。最初はばかみたいに恥ずかしくて、僕はばかみたいに身体をじたばたさせていたのだけれど、沢木のその、プリンになりそうなかわいいつむじを見ているうちにだんだん落ち着いて、まあ、いいか、という気になってきた。まあ、いいか。沢木はかわいいし、それに、実際のところそういう気分になるにはあまり上手くなかった。ちく……だし。
「っぁ」
「なんか、すげーな」
「なに、が」
「男でも、乳首で感じるのな」
 今度は、止める余裕はなかった。
「沢木、うるさ、いっ」
「え、だって蛍勃って」
「死ね!!!」
 今まで手持ちぶさただった両手と力が抜きかけている両足を総動員して、僕は沢木への攻撃をはじめた。いくらなんでもデリカシーがなさすぎる。いや沢木にデリカシーなんてものを求めるのは間違っているかもしれないけど、でも。
 自分でちらと確かめたところ、それが本当に緩く存在を主張していることがまた僕をのけ反らせた。沢木は確かに下手だ。しかし下手だからといって油断をしていると、そのうち舐めたり甘噛みしたり潰したり、のどちらかというとくすぐったい刺激のうちに、なんと言おうか、当たりの瞬間がきて、僕はつい声を出してしまったり、地面に爪をたてたりしてしまう。そういうことをしているのだから仕方がない、という建て前は、この場合あまり意味をなさない。要するにただ単に悔しかったのだ。同じ男として、こんな、女みたいなことは。
「ぃや、だ、さわきっ」
 すると、ついに問題の場所に手をかけはじめた沢木は真面目な表情で顔を上げた。何か言わなければと考えながらも僕がほっと息を吐いたのも束の間、
「だって、このままだと蛍、辛いだろ」
 真剣な調子で口走ったものだ。
「……!」
「うわ、ちょっ、蛍痛い!痛いって、ば」
「有り得ない……沢木が有り得ない……」
「いや、だからさ、ほら、俺だってシコってる最中に母ちゃんとかに入ってこられたりしたらめちゃくちゃ困るっていうかむしろ苦しいっていうか、そういう意味だから他意、とかは何もなくてだな。だから、生理現象っていうの?」
「こんな生理現象、嫌だ……」
「あー、ほら蛍!何をそんなに、ったく、泣くことないってのっ」
(え)
 沢木のその言葉で、僕は今日一番にうろたえた。うろたえながら言われるがまま頬に指を宛てる。少しべたつく、そこ。
「………………」
「嫌だったら、止める、けど」
 出た。もう今日何度目かしれない爆弾発言。
「そんな甲斐性のないことでどうするの、沢木」
「へっ?!」
「さっきは偉そうだったくせに」
「……悪い」
「謝らなくてもいいよ。あと、」
 やっぱり辛いから、沢木がしたいんだったらしてもいいよ。
 それでも尚目を見開いたまま、動きを止めたままの沢木を、仕方なく引き寄せた。沢木の手を包み込み、先走りでねっとりとした自身を扱く。気持ち悪くて、気持ちよかった。女みたいな声が上がる。けれどもう気にしてはいなかった。
 沢木はばかだ。そして僕も、たぶん。
「さわき、きて」



***

すいませんここでぷっつんします(土下座)。
最後の蛍の台詞言わせるのにどんだけかかったのかと……!
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