PLAYS

□《怪我の功名》
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*

「蛍、お前俺のこと馬鹿にしてただろ」
「え」
「俺にお前がおぶれるわけがないって思ってただろ」
「……どう考えたらそうなるんだろう」
「くそ、こうなったら何がなんでも結城酒造までは」
「沢木、限界近い?」
「うるせー!!」
 自転車にふたり乗りをしていた、近くの高校の制服を着た女の子がふたり、くすくす笑いながらふたりの横を通り過ぎていった。
「ったく、こんな時に限って……ていうかこんなはずじゃなかった……」
 ぶつぶつ言う沢木の肩に僕が掴まっている。気の遠くなるようなシチュエーションだった。
 それに、こんなはずじゃなかった、は明らかにこっちの台詞だ。
 本来ならば僕も自転車の後ろに乗る予定だったのである。しかし沢木の自転車がパンクしてしまって修理に出されていたのを忘れたせいで、結果的に僕たちは今完全に不審人物だった。場所が場所なら補導されかねない。
 相も変わらず不安定な背中にしがみつきながら考える。意地を張る沢木は面白いけれど、弄り過ぎは禁物だともよく分かっているから少しばかりつまらなかったりする。
「沢木」
「なんだよ」
「こうしてると、昔みたいじゃない?」
「……俺は蛍におぶわれてばっかだったけどな」
「そうだっけ」
「お前がちっちゃいことでも無駄に大きくするから」
 僕は思わず吹き出していた。結城酒造まではもうすぐ。だから遊んでみようかなとの考えは今やすっかり消えて、代わりになんとなく嬉しくなってしまう。すっかり慣れてしまって通行人の視線は最早全く気にならない。
 この幼馴染みが心配してくれたこと。でもやっぱり僕の考えていることなんて沢木にはちっとも分かっていなかったのだ。
「沢木」
「……今度はなんだよ」
 笑ったせいか、不機嫌気味の沢木の声。
 僕はもう一度、実はあまり居心地のよくないその背中にしっかりとしがみつくと、彼の耳元で小さく呟いた。
「沢木もね」



***
再び男前を目指して。
いつものことですが、最後らへんが意味不明ですね……。
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