小説@
□その言葉は、嘘じゃなかった
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齢14、中学二年生にしてスクアーロの内定が決定した。いや、本人がある条件を出しているためまだ確定はしていないが。ちなみに、行き先はヴァリアー独立暗殺部隊という極めて危険の高い場所だ。
「あ」
丁度俺が話している時かスクアーロが話している時かは定かではないが、ともかく会話中にもかかわらず、スクアーロの視線が俺の後方辺りに釘づけになる。何か興味をそそられるものでもあるのかと俺も後ろを振り向いてみたが、生憎それらしいものを見つけることは出来なかった。
「…どうかしたか?」
「いや…何でもねぇ」
視線をスクアーロに戻すと、奴も既に俺の後方から視線を外した後だった。ただの予測にすぎないが、タイミング的にギリギリそれを見られなかったということに少し悔しさを感じる。
スクアーロが再びそこへと視線を移す。その瞳に羨望というか強い憧れの光が宿っているのが見え、先日ほんの少し耳にした程度の話題を思い出した。
「例の『御曹司』か?」
「あ゙ぁ゙」
御曹司、と口にした瞬間俺の言葉に被るようにして即答された。そこまでその人物に強い想いを抱いているのかと思うと、ちょっと引かずにはいられない。
「何だよ、俺との話を中断させてまで見惚れるようなイイ男なのか?」
「見てみりゃ分かるぜぇ」
冗談混じりに言った言葉を本気の目で返された。人物に関する話題でこの男がここまで真面目に答えるのは初めてのことで、戸惑いを隠せない。何と切り返すべきなのか少しだけ思案し、結局思いつかなかったのでそのままの路線でいくことにした。
「んだよ、そんなに魅力的なら俺にも紹介しろよ」
「そのうちなぁ」
結局最後までいまいち噛み合わないまま、その話題は終了してしまった。
その言葉は、嘘じゃなかった
それから数日後、今と立場が逆の全く同じ会話を繰り返すことになる