短編小説
□恋する卵
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恋する女の子は可愛いって昔から言うけれど……。
「最近さゆり綺麗になったんじゃない?」
急にゆかがあかねに耳打ちする。
さゆりは最近彼氏が出来たらしい。
「恋する女は綺麗って本当ね」
あかねが嬉しそうに言うと、更に嬉しそうな顔をして、ゆかは笑った。
「あかねだって乱馬君が来てから随分変わったよ〜」
「なっ!何言ってんのよ〜!」
昼休みの教室、思わず大きな声を上げたあかねに一斉に振り向いた。
「どうしたんだ、あかね」
「俺に聞くな」
窓際でヒロシと大介と焼きそばパンを頬張っていた乱馬は、その言葉であかねの方を向いた。
恥ずかしそうに、さゆりに笑いかけている。
「やっぱり可愛いよな、あかね」と大介がボソリと呟くと乱馬は条件反射のように否定する。
「かわいくねぇよ」
あかねの笑顔に見とれてしまった事は、微塵も見せないようにしながら。