長編小説

□帰魂−6
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熱い声援が響く。
今日は奴…聖 静(ひじり せい)との勝負の日。

太陽の光と熱が頭上から振りそそぐ。
見慣れた学校のグラウンドには、陽炎が揺らめいていた。
俺の方が先についたらしく、奴の姿はまだない。
どこからか聞きつけた野次馬どもが、どんどん集まってくる。
空は青くて、雲一つ見当たらねえいい天気だ。
俺の手のひらには…じんわりと汗が滲んでいる。
さっきまで、痛いくらい強く強く握っていたせいだ。
自分が滑稽に思える程、柄にも無くバカみたいに緊張していた。

…気持ちが…高ぶる。
冷静を保つのが、やっとだ。


あかねが迷っているのは分かってた。
だからこそ、早く、早く。
あかねを取り戻したかった。
不安と焦りが、体中に虫が這っているかのようにゾワゾワと駆け巡る。
こんなのは…俺らしく、ねえ。
俺が俺である為には、どうしてもあかねが必要なんだ。




…勝負がついたらすぐにでも、あかねは返してもらうぜ。







  『帰魂-6』








 
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