月の夢
□第一章【月夜の誘い】
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【※重衡視点】
月からの使者か
桜の精か――
十六夜の光を受け、純白の桜吹雪とともに降臨した少女
初めはあの十六夜の晩、簾越しに儚い逢瀬を交わした少女が再び現れたのかと思った――
しかし目の前に眠るように横たわっているのは、漆黒の艶やかな髪に雪を思わせる白い肌…牡丹のように赤く潤う唇をもつ女性…いや、少女だった――
(…―十六夜の君、ではないのですね…貴方は一体…)
簾越しではっきりとは見えなかったが、十六夜の君と目の前に横たわる少女の纏う気が異なることだけは分かった。
探していた少女とは別人だと分かっていながら、まだ見ぬその瞳に早く自分を映して欲しい、と…
重衡の心は月と桜に囚われていた