月の夢

□間章【温かなモノ】
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「まぁそのようなものですね」


ところで…と重衡は黒い笑みを増し将臣に訪ねる


「還内府殿は白桜の君とお二人きりで何をなさっていたのです?」

(こいつ…目が笑ってねぇι)

「いや、何もしてねぇけどよ…」

つぅっと、背筋に冷たい汗が流れるのを感じた時、白桜が口を開いた


「わたしは敦盛殿に笛を奏でてもらった帰りに通りかかっただけよ?そしたら将臣が紅葉を眺めて憂いていたから…ね?」


先程のお返しだ、とばかりに楽しそうに笑う

が、重衡と知盛は“将臣”という言葉にピクッと頬を引きつらせた

「ほぅ…お二人は知らぬ間に随分と親しくなられたようで?」


「是非ともじっくり聞かせて頂きたいものですね」


普段聞き慣れない知盛の丁寧な言葉使いと、重衡の氷点下の微笑に将臣の顔が青くなる


(マジで勘弁してくれ!)


「い、いや…お前らだっていつまでも殿付きで呼ばれんのヤだろ?な?」


必死に誤解を解こうとする将臣を他所に重衡は白桜の手を取った


「白桜の君…どうか私の事も“重衡”とお呼び下さい」


瞳をうるうるさせ見上げてくる姿は、まるで捨てられた仔犬のようだ


「おい、知盛!お前もそう思うだろ?」


「………」


知盛に同意を求めた将臣だが、彼は何も言わずにプイッとそっぽを向いてしまった

(こいつ…拗ねてやがるι)


「兄上、素直になられたほうがよろしいのではないですか?」



いつの間にか余裕の笑みを浮かべている重衡を横目で睨み、暫く沈黙した後に知盛はポツリと呟く



「……殿はいらん…」
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