月の夢

□第三章【清盛との対面】
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翌日の朝、白桜はある部屋へ向かっていた


前を歩くのは昨晩覚醒の場に居合わせ、彼女を平家の邸へ連れ帰った銀髪の二人――


『父上がお前に会いたいと言っている。来い』

知盛がやってきて告げられた言葉


そう、向かっているのはこの邸の主…平家一門を束ねる平清盛のもと。


(死反しの術によって怨霊として甦った清盛公…)

何らかの呪詛によって命を落とし、自らの意志で甦ったと言う



(…黒龍の逆鱗の力、か…)


応龍の消滅によって陰と陽の半身に分かたれた力

その陰の半身、黒龍の力を彼が持っている


(これ以上怨霊を造り出す前に、早く取り戻さなければならないわね…)


応龍の復活は全てが終わってからだが、五行を乱され続けてはこの身にも影響してしまう


それにしても…

応龍の消滅と時同じくして呪詛により命を落とした清盛

おそらく二つの呪詛を施したのは同じ者だろう


そんな事を考えていた時、前から一人の男がこちらに向かって歩いてきた


「よぉ、無事に目ぇ覚めたみたいだな?」


青い髪、その身に巽の気を纏う青年

「有川…か」

「還内府殿…いかがなさいました?」


有川将臣――

今は亡き平重盛の面影に酷似していたことから、重盛の甦りとされ『還内府』と呼ばれている男


異世界から来た者

天の青龍


そして


源平の戦の行方を知るこの男は、平家の運命の要――


「あぁ、お前ら清盛んとこに行くんだろ?俺も呼ばれてんだ。」


待っているのも暇なので迎えに来た、と笑う将臣


「初めまして、白桜と申します。還内府殿…それとも将臣殿、とお呼びした方が?」

その言葉に眉をひそめる

「お前…俺の事知ってんのか?」

瞳に宿るのは警戒の色


昨夜遅くに、銀髪の兄弟が眠ったままの少女を連れ帰ったと言う事を聞かされていた将臣


もしかしたら探していた幼なじみかもしれない、と部屋で大人しく待っていることができずにこうしてやってきたのだ


しかし其処にいたのは見知らぬ少女


その少女が何故自分の名を知っているのか?
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