月の夢
□第五章【再会】
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桜も散り、新緑が栄える季節がやってきた
“剣を取りに行ってくる”
そう告げて平家の邸を出てきたのは数日前…
白桜は今、熊野の地に来ていた―――
太陽の光を受け、キラキラと輝きを放つ樹々を眩しそうに見上げてそっと息をつく
(ここは神気に満ちている…)
“神々の国”と呼ばれるだけあって、熊野は神聖な気に包まれていた
そんな中でふと、過去の記憶の断片をたぐり寄せる
『わたしが眠りについても、きっとこの剣は血を求め続ける。だから…邪悪な者の手の届かぬ場所に封印してほしい――』
『それがお前の望みならば…オレはこの剣と共に神の地に眠ろう。いつの日かまた…お前と巡り会うその時まで――』
『有り難う、白蓮』
“白蓮”―――それはかつて邪神に取り込まれかけていたところを助け、白桜の眷属となった犬神の名
(貴方は何処に眠っているのかしらね…?)
白桜は意識を集中させ、神気の一番強い場所を辿った
(これは…本宮大社の方角かしら)
そう確信した白桜は再び歩き出した