月の夢
□間章【温かなモノ】
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季節は過ぎ、平家一門は福原に都を移していた
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燃えるような緋色の夕陽が差し込む濡れ縁で、将臣は庭に植えられた鮮やかに色づく紅葉を眺めていた
(この世界に来てもう3年か…早いもんだな)
今はもう元の世界での日々が遥か昔の出来事のように感じられた
「懐かしいな…」
「何が懐かしいの?」
誰に向けたでもない呟きに応える声
「?!おまっ…脅かすなっつぅの!」
驚き振り向いた先にいたのは白桜だった
「フフ、ごめんなさい。なんだか物思いに耽っているみたいだったから…」
でも気配を消していたわけじゃないのに、と楽しそうに笑う
白桜が平家に身を置いて半年
彼女は最初の頃と違いよく笑うようになった
この半年、源氏に感づかれない為に表だった行動はせず、平家を率いる還内府の良き相談相手として過ごしてきたのだ
「お前変わったよな…」
ふいに将臣が零す声に首をかしげる
「そうかしら?」
「あぁ。なんつぅか、人間ぽくなった」
「…。それって何だか複雑だわ」
何ともいえない顔つきで考え込んでしまった白桜の頭をクシャッと撫でてやると、拗ねたような幼い表情になる
「褒めてんだぜ?初めて会った時は取っ付きにくいヤツだと思ってたのに、今じゃ姉貴みたいな存在だもんな」
ニッと白い歯を見せ笑う将臣