月の夢

□第五章【再会】
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本宮大社の周辺には結界が張られており、その裏手に位置する深い森の最奥から微かに懐かしい気配を感じた


二重に結界が張られたそこは、恐らく高位の神職の者のみが足を踏み入れる事を許された神聖な区域だろう



サクッ


白桜の体は難なく結界内に入った


「此処、ね…」


立ち止まった場所には初夏だというのにも関わらず、純白の花弁を満開に咲かせた桜の樹があった


(白蓮…わたしが来ることが分かっていたの?)


そっと幹に触れ瞳を閉じる


ドク…ン


触れた場所から確かな鼓動を感じる


「…いつまで其処に隠れているつもり?」


白桜は本宮に入ってからずっと感じていた気配に呼びかける


「クスッ。驚いたな。いつから気づいてたんだい?」


スッと音もなく背後の樹の上から一人の少年が降りてきた


「わたしが本宮に入ってからずっとつけていたでしょう?何か用かしら?」


振り返ることなく告げる


(火の気を纏う者…天の朱雀?)
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