短編2

□wing of memorys
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忘れない忘れないわすれない。











キミと過ごした時間も空間も世界も。













ぼくはわすれない。



















忘れていいと、キミは言ったね。




「私は、貴方の前を遮りたくないのよ」




青白い顔で呟くキミは、何故か笑っていた。




怖いとも淋しいとも辛いとも苦しいとも







キミは言わなかった。
















「……僕はさみしいよ。キミを忘れてしまったら、キミを想った僕も、僕を想ってくれたキミも、本当に消えちゃうんだよ」













キミがいなくなってしまうだけでこんなにも苦しいのに、忘れてしまったら、きっともっと苦しい。












「それでも、貴方には笑って前を向いて欲しいから」
















いちばんだいすきなあなたが笑っていてくれるなら、忘れても構わない。
















そう笑って、キミはゆっくり目を閉じた。























最後まで握られた僕の手から、ヒムカのまだ若く皺もない手が零れ落ちた。
















キミがいなくなっても僕は変わらなくて、今も空を羽ばたいている。






ふと地上を見下ろせば、トレーナーの子供とポケモンが、ボロボロになりながらも笑っていた。













あぁ僕も、キミとそんな関係だったろうか。












キミは余命幾ばくもなくて、僕は伝説のポケモンで。

あの子供とポケモンのようにボロボロになりながら旅なんて到底出来なかったけれど。













それでもあの子供とポケモンのように、心から信頼し、想い合い、笑い合える関係だったと思う。


















あれからしばらくして、僕の対だった神は、キミのような人間に出会ったよ。








僕も、またいつか出会うのだと思う。
キミのような人間がまだまだたくさんいるのだと、キミが笑って言っていたから。















だけど、それでも。



















僕はキミを忘れない。












キミを想った僕は確かに存在して、















僕を想ってくれたキミも、確かに存在したんだ。
















僕は前を向いて飛ぶけど、







たまに後ろを振り向いて









相変わらず笑って手を振るキミに










僕も笑って手を振り返すんだ。























忘れない忘れないわすれない。









wing of memorys









(キミの全部が僕の翼)











うちのホウオウは灯という名前です。
金銀だいすきだ……!


2009.3 Dr



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