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□忘却の彼方
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何か大事な事を忘れてる‥
その何かをずっと
探し続けてる。
九番隊の副隊長になってかなりの月日を過ごして来た。
尊敬できる隊長の元で死神をやっていられるこの現実にそれなりの満足感があった。
不安も不満もなかったはずだった。
なのに‥
あの日、副官仲間で飲みに行く事になった。
いつもの店に行くと一杯で入れなくて仕方なしにそこから少し離れた店に入った。
店はごく普通の居酒屋で雰囲気も悪くなかった。
店をやっているのは年輩の人が一人と俺より少し年上に見える女の人が一人いるだけだった。
その日の飲み会は久しぶりって事もあって皆話は尽きる事がなかった。
結局だいぶ遅くまでその店に居座ってしまった。
もうとっくに閉店時間じゃないかと店内を見回せば俺達以外の客の姿はなかった。
他の席の片付けをしている店の人に話し掛けてみた。
「あの‥こんな時間まですいません‥もう閉店ですよね?」
『いいんですよ。うちはお客さんがいるうちは閉めたりしませんから』
愛想良く応えながら振り向いたその人と初めて目が合った。
『っ‥‥!』
「ぇ‥?」
目が合った瞬間、お互いが何かを感じて‥
そして押し黙った。
「あの‥以前どこかで‥」
『ぃぃぇ‥人違いです』
「ですよね‥すいません、可笑しな事言って」
『いえ‥ごゆっくりなさって下さいね』
どこか不自然な笑顔を作って笑ったその人は店の奥に入って行ってしまった。
その日はもうその人は姿を見せる事がなく、名前すら聞けずに仲間を担いで隊舎に戻った。