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□ロングロード
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それでも仕事はきちんとこなしてくれる。

煮え切らない気持ちを抱えたまま日々を過ごす俺に最悪の報せが届いた。

親父が倒れた。

病床に伏す親父に呼ばれて言われたのは身を固めろ。

その一言。

相手ももう決めてあると言う。

いくら親父の言う事でもそれだけは聞けなかった。

訳を聞かれた俺は当然のように仁美の名前を口にした。

親父も当然のように反対した。

親父と会っている間仁美はロビーで待たせてあった。

病室を出た俺は仁美を連れて部屋に帰った。

嫌がる仁美を無理矢理部屋に入れた。

部屋に入ってすぐに親父の話をそのまま聞かせた。


『おめでとうございます。あのお嬢様でしたら副社長ともお似合いですね』


顔色一つ変えずに言われた。

その後、俯いたまま仁美は部屋を出て行った。

親父との話し合いに進展はなく、焦れた親父は俺の知らない所で仁美を呼び出した。

そして仁美の忠誠心を利用した。


「君も修兵の事を思うなら修兵を説得してくれないか?修兵にとってこんないい話はないんだよ。あいつの将来のためなんだ」

『分かりました。私からも説得してみます』

「頼んだよ」


実家の家政婦を長い事やってくれている清さんが俺に教えてくれた話だ。

親父との約束通り仁美は俺に結婚をすすめた。

それでも俺が言う事を聞かないのは仁美が約束を守らずに俺を唆していると親父は勘違いして裏で手を回した。

ある朝仁美が出て来ないと専属の運転手から携帯に電話が入った。

嫌な予感を覚えながら仁美のマンションまで車を飛ばした。

マンション前では運転手が青い顔をして震えていた。

エレベーターで七階まで上がりドアノブを回すと鍵は開いていた。


「仁美!」


靴を脱ぎ捨て中に入ると全裸で痣だらけの体を抱いて震えていた。


「仁美‥何があった?」


手近にあった毛布を体にかけて問いかけると声を殺して泣き出した。


「誰がやったんだ?俺に教えてくれ!仁美!」


ただ首を横に振り泣き続ける。

そこである事を思い付いて運転手を部屋に呼んだ。

玄関先で問い詰めると社長には内緒にしてくれって事で話をしてくれた。

昨日、会社近くの裏路地で親父の秘書が今見た男達に金を渡しているのを確かに見たと教えてくれた。

仁美を脅かして傷つければ大人しく言う事を聞くとでも思ったんだろう。

怒りに熱くなった俺は仁美を病院に連れて行き、すぐ親父のいる病院に向かった。

病室のドアを勢いに任せて開けて親父に駆け寄り胸ぐらを掴んだ。


「修兵‥苦しい‥やめないか」


親父の体をベッドに投げ飛ばし罵り、最後に一言告げた。


「俺を甘く見るなよ」


それだけ言い残しパソコンを会社に取りに行き仁美がいる病院に向かった。





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