空を夢見た隼は天に音色を響かせる
□第一章-一時間目-
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この文月学園に入学してから二度目の春が訪れた。
校舎へと続く坂道の両脇には新入生を迎える為の桜が咲き誇っている。流石に春にしか見れないだけあって綺麗なものだ。だけど、今の僕にそれを愛でる暇はない。
桜の花びらの雨を浴びながら僕は坂道を急ぎ足で走っていく。
「急がないと…」
滅多に寝坊をしない僕だけど今日から新しい学園生活が始まると言うこともあり、まるで遠足前の子供のように眠れなかった。
校舎に入り、四段飛ばしで階段を駆け上がる。朝からいい運動だ。
去年はほとんど来た事がない三階…そこに踏み入れると目の前に飛び込んできたのは通常の五倍はあろうかと言う広さを持つ教室だった。ここがAクラスか。
僕はAクラスを尻目に渡り廊下を渡り、旧校舎へと向かう。
「ここがEクラス…」
と言うことは…もう1つ先か。僕はEクラスをスルーしてかなり老朽化しているように思える教室の前に立つ。
「…ここが、Fクラスですか」
軽く深呼吸をして息を整える。ここが僕の学舎か…妙に小綺麗なのよりはもしかしたら良いかもしれない。
遅れちゃったし早く入ろう。僕はFクラスの扉を開けた…
『そう言えば俺も熱(の問題)がでたせいでFクラスに』
『ああ。化学だろ?アレは難しかったな』
『俺は弟が事故にあったと聞いて実力を出し切れなくて』
『黙れ一人っ子』
『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて』
『今年一番の大嘘をありがとう』
…なんとなく、すぐに閉めたくなってしまった。