空を夢見た隼は天に音色を響かせる
□第一章-一時間目-
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姫路さんの言い分を聞き、ちらほらと言い訳の声が上がる。
…これは想像以上にバカだらけだ。
「で、ではっ!一年間よろしくお願いしますっ!」
そんな中、逃げるように僕と雄二の隣の空いている卓袱台に着こうとする彼女。こうして同じクラスになって近くにいるかと思うと、正直ドキドキする。やっぱり可愛いな。こんな設備の教室に迎えるのが犯罪だと思える程だ。
「…あ、あれ?」
席につくや否や、安堵の息を吐いて卓袱台にに突っ伏したかと思うとすぐに顔を上げる。何かあったのだろうか?視線の先を見てみると扉を開けて立ち尽くしている生徒がいた。
「あの…こ、ここがFクラスですよね?」
「はい。丁度今、自己紹介をしているところなので黒峰君もお願いします」
黒峰と言う名前とその女の子のような容姿に姫路さんが来た時のようなざわめきが再び起こる。
「えっと、今日から皆さんと共に勉強することになります黒峰隼と申します。どうかよろしくお願いします」
ペコリと、頭を下げるその姿は秀吉に近いものがあると思う。ベクトルは違うけど。
『あの、質問いいですか?』
「はい、なんですか?」
それは、姫路さんにしたのと全く同じ質問…
『どうして、ここのクラスにいるんですか?』
その質問はごもっともだった。なんと言っても…黒峰隼と言えば並べる者はこの学年ではAクラス代表の霧島さんしかいない程頭が良く、去年は学年主席であった。
「振り替え試験の当日に休みまして…」
苦笑いしながら黒峰君が言う。なるほど。テストすら受けていなかったのか。点数がつかないからFクラスに回されたということか…
『なんでテストを受けなかったんだ?』
そうだ。テストを休む位だから何か重大な訳があったのだろう。皆が耳を傾ける。
「実は…当日、熱を出してしまいまして…」
あーなるほど。姫路さんと似た感じかぁ…だけど勿体ないなぁ。途中早退ならまだしも休むなんて…
「…妹が」
『『『『そりゃ大切だ』』』』
妹と口走ったとたんにこの団結力。この結束力だけはAクラスにも負けないんじゃないかな?とか思える位に見事にクラスメート達の声が被った。
『仕方ない。妹が病気なら仕方ない』
『俺も弟が病気で』
『だから一人っ子だろ?』
『妹さんを下さい』
『むしろ付き合って下さい』
こら。誰か知らないけど告白するな。確かに綺麗な顔つきだけど男の子は男の子だと言うのにそれがわからないのか…?…秀吉にしておきなさい。
黒峰君は騒々しい僕達を見て苦笑いするだけだった。ゴメンね?バカな僕達で。