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森のフォーラム

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Re:短編小説
そら
[ID:takayauke]
前のスレに投稿したやつです




俺の欲しいものってなんだろう。そう思いながら夜道を歩く。
自由?
いや、こんな時間に歩いてる時点で自由だ。
金?
あんな家に金がないわけがないだろう。
じゃあ何が欲しいんだ。
街頭の回りを飛び回る小さな羽虫を横目でちらりと見て、ポケットに手をつっこむ。
病院であったあの子はなんだったんだろうか。
俺は数日前まで入院していた病院を思い浮かべ、そこにいた白い肌の少女に思考を巡らせた。
「私はね、忘れられるの。」
小さな小さな女の子は言った。
一切の感情を失ってしまったようないつもの顔に、少し悲しみを浮かべながら。
俺の主治医になっていた兄貴は少女に気付かなかった。
病室に入ってきた俺の親達が俺を兄貴と比べ罵倒している間も、少女には気付かなかった。
「私は忘れられているの。」
退院する日、少女が消えた。
少女は多分、存在を欲しがっていたんだろう。
うるさい親どもを除けば何不自由ない俺は、何を求めているんだろうか。
「腹減ったな。」
コンビニに入りパンと菓子を手にレジに向かい、言われた金額にたいしクレジットを出し支払う。
コンビニから出てパンをかじりながら歩き続ける。
少女は何処に言ったのだろう。
最後に会ったあの日。少女は少し微笑みながら言った。
「私を、忘れないで?」
そういえばそんな事を言っていたな。まぁ、今は関係もないだろう。
足の下に小さな花があることに気付く。
踏み潰さないように足を下げるのをやめた。いつもならそんな事考えなかったのに。その小さな青い花にあることを思い出したから。

退院した日、少女が部屋から消えた日。中庭の隅に小さな青い花を沢山付けた花があった。何故か目を引いたその花。
「そんな所に花あったのねぇ。勿忘草。」
「ワ、スレナグサ…。」
看護師さんの呟きを片耳で聞きながら立ち上がり病院を後にした。
それを思い出した俺は携帯を取り出し、勿忘草と検索した。
「勿忘草…春、夏に青い花を咲かせる…花言葉は…」

『私を、忘れないで。』

じゃあ、あの少女は……。
携帯をぱちんと閉じ、俺は歩き続けた。
俺が欲しいものは…
あぁ、そうか、分かった
瞼の裏にあの日の家族を思い浮かべ、知らない間に口元に笑みを作り俺は歩き続けた。

***

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