0-3外伝

□中田さんと秋持くんよ
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「で、神崎ってヤツがいつもイチャイチャしてさー」

悠一くんの話を聞きながら学校へ向かっていた。

でも私は重大な事に気が付いていた。

…この人、同じクラスだ………

「いっつも朝からイチャイチャしてもうムカツクんだよね!!」

秋持くんは気付いてないみたいだけど……同じクラスだ!!

友達の居ない私はいつも本を読んでいてクラスで存在感はないし、私も他の人の名前とかは知らない。

でもこの人は、授業中にいっつも騒いでるから見覚えがあった。

本を読んでて時々チラッと見るくらいだったけど…

ここまで全然知られてないとちょっと寂しいかも…

「そろそろ着くから、ここで降りたほうがいいな」

自転車から降りた私と悠一くんは門まで走っていた。

「あ、秋持くんは…自転車に……」

「いやいや、雪ちゃん置いてくとか無理!!」

「…あ…りがとう…」

何とか一分前に門をくぐると、昇降口に担任の緋藤先生が居た。

「秋持。弱みを握って中田を脅すとは下劣だな。ちょっと職員室と生徒指導室と警察まで来てもらおうかな。」

「握ってねぇ!!何でそこまでの惨事になんだよ!!」

「中田、いいカウンセリングの先生紹介してやろうか?話せば少しは楽になるかもしれないぞ。」

「…い、いや別に…」

「ん?そうか…まぁ、いつでも相談来ていいからな。秋持は来るなよ。警察なら歓迎だが」

「お前は警察の何なんだよ!!」

「朝からうるさい。ほら、中田。教室行くぞ。」

「クソッ…てめぇ」

鐘が鳴ったため、急いで教室へ向かった。

緋藤先生はものすごい勢いで走っていき、私達はあっという間に置いて行かれた。

「…あの野郎、俺を遅刻にするためにあそこで足止めしやがったな…」

忌々しそうに呟きながら階段を上がっていた。

悠一くんは階段を上がると足を止めた。

「そうだ、雪ちゃんの教室どこ?送るよ」

「え?あ、いや…大丈夫だよ」

「いやいや、遅刻の原因は俺だしさ、説明するって」

「あ、いや…多分先生は知ってるし……」

「?」

ここまで言っても気付かないらしい。

さっきの緋藤先生の会話から考えても同じクラスだって気付いてもおかしくないんだけど…

そして私は、このままじゃ埒が開かないので悠一くんに言った。

「……同じ、クラス…」

「………」

それを聞いた時の悠一くんの表情は、すごかった。

本とかでページを丸々使えそうな。

言った私がとてつもなく悪い気がしてくる。

「……同じクラス?」

「…同じ、クラス。」

「………」

悠一くんは黙り込んでしまった。

必死に状況を処理しているらしい。

そんなに頭を使うことじゃないと思うけど……

そして結果が出たらしくいきなり顔を上げると、私の手を掴んだ。

「よし、教室行こう」

あ、投げ出した。



教室に着くと、勢い良くドアを開けた。

「ちぃーっす。」

「秋持遅刻。中田、席着けー」

「あくまで俺だけか!!」

先生と元気にやり合った悠一くんは自分の席へついた。

私は、窓際の一番後ろの席に座ってカバンから本を取り出した。

しおりを挟んでいたページを開くと読書の世界に入り込む。

いつもこんな感じで、大抵の話は聞き流している。

すると、いきなり誰かに本を取られた。

「?」

顔を上げると緋藤先生が取り上げた本をペラペラと読んでいた。

「中田、先生の話は聞くもんだぞ。聞こうとしても聞くほどの頭がないバカもいるんだからな。」

「そこで俺を見るな!!お前ら!!」

クラス中の視線が悠一くんに集まっていた。

悠一くんは相変わらず元気に叫んでいた。

「ま、これは没収だ。放課後にでも取りに来い。」

「……はい」

嫌々ながら返事をすると、教卓へ戻る先生の背中を見送った。

私は溜息をつき、カバンから新しい本を取り出し、ページを

「待て、中田。先生にツッコミをさせるとは侮れないやつだ。」

開く前に戻ってきた先生に止められた。

「ちょっとカバンを貸してみろ。」

言うと先生は私のカバンをチェックして、中にあった本を全部取り上げた。

「……10冊?お前、弁当は?」

「……パンです。」

「そうか、でも弁当もいいもんだぞ。とりあえずこれは没収な。」

「…はい」

嫌々ながら返事をすると、たくさんの本を持って教卓へと戻る先生の背中を見送った。

二度目の溜息をつくと、私は机の中から新しく本を取り出し、ページを

「待て待て待て、予想通りすぎて待て。」

またもや戻ってきた先生に止められた。

「……なんですか?」

「何ですかじゃない!!先生中田のそんな目初めてみた!!」

先生は私の机から本を取り出して、取り上げた。

「…中田、何で本を取ると机が空になるんだ?」

「……」

「……とりあえずロッカーから教科書とか持ってきておけよ。これは没収だ。」

合計して20冊近くの本を抱えた先生は辛そうに教卓へ戻っていった。

さすがにあれだけ取られると少し寂しい。

私は仕方なく携帯を

「それも没収な。」

取られた。

いい加減読むものがなくなってきた。

制服の中から本を取り出し

「ドラえもんか!?」

取られた。

「はぁ…はぁ…さ、さすがにもうないだろ。ロッカーは念のため確認させてもらうぞ。あと、今日は図書館禁止だ。」

「…」

思い切り嫌そうな顔をしてしまう。

先生によって完全に読書を奪われてしまった。

腕時計で時間を確認すると、横の部分を四回引いて…

「何で女の子がそんな少年漫画の主人公みたいな仕掛けをしてるんだ!!それも没収!!」

こうしている間に鐘がなり、HRは終わった。

…私の本………
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