0-3外伝
□中田さんと秋持くんは
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丘の上での出来事からちょっと。
私と悠一くんは学校へ行く事にした。時刻は12時少し過ぎ、学校に着く頃には昼休みだろう。
私達はお互いに並んでぎこちなく歩いていた。
悠一くんは、さっきから手と足が同時に出てるし、私はやたらこけそうになってたりする。
平日だから人通りが少なくて良かった。
「ね、ねぇ」
不意に悠一くんが口を開いた。
「は、はいっ!?」
思わず敬語で返事をする。
「…本当に、俺でよかったの?」
当たり前だよ、と即答した。
「…私、あんな話できる人に会えるなんて思ってなかった。ずっと一人でいると思ってた。」
悠一くんを見つめて言った。
「まだ会ったばかりの人にここまで感情を吐き出せて、こんな感情を持てて、それで、その思いが叶うなんて……運命かもって」
そこまで言って恥ずかしくなって顔を伏せた。
「…きっと、運命なんだよ。偶然なんかじゃない」
空を見上げながら悠一くんは言った。
その顔は少し恥ずかしそうだ。
私も同じように空を見上げると、悠一くんの手が私の手を掴んだ。
「……嬉しい」
私はその手を強く握り返した。
もう、離さないからね?
意地悪そうに悠一くんは言った。
学校に着くとまずは職員室へ向かった。
学校に来たというのを担任の先生へ伝えるため。
職員室に着くと悠一くんはドアを勢い良く開けた。
「緋藤センセー!」
元気に言うと同時、無数の参考書が飛んできた。
「うおおおおおっ!?」
「ひゃあ!?」
それを避けると、忌々しそうな舌打ちが聞こえ、奥から緋藤先生が出てきた。
「何だ中田もいたのか。悪かった、怪我はないか?」
「は、はい…」
「……俺にはいいのかよ」
「え?お前居たの?」
「お前今、中田もって言っただろ」
「いや、ドアの前に居た武士の亡霊に向かって退魔の参考書投げただけだけど」
「お前は何と戦ってるんだよ!!」
「あはは……」
恒例のコントに思わず苦笑いしながらも用を済ませて屋上に向かう。
「午前は丸々サボったからな…」
「ご、ごめんね?」
「何言ってんのさ」
そんなやり取りをしながら階段を登ってドアを開ける。
何故か緊張していたため、妙にドアノブが冷たく感じた。
「あ、悠一くん?と、中田さんも」
ドアを開けると汐宮さんが私達に気付いた。
遅れて鈴森さん、神崎くんが私達に気付く。
「遅いぞ悠一。中田さんも。おかげですんごい腹減ってる」
「キミたちのせいでご馳走を目の前にず〜っとおあずけだったんだよ」
「遅いよぉ。一体何してたの?」
汐宮さんの問いかけに私と悠一くんは互いに顔を見合わせて、顔を真っ赤にする。
その反応を見た神崎くんが、信じられない速度で悠一くんの近づいて腕を掴んで端のほうへと連れて行く。
私は汐宮さんと鈴森さんの興味津々な目に怯んだ隙に同じように悠一くんとは反対側に連れて行かれた。
そこで質問責めに合うのは本の世界だけじゃないんだなぁ。
「雪ちゃん!悠一くんと何かあったの?」
「秋持の反応も見るからに確実に何かあったな。あんな反応初めてみたよ」
「午前中来なかったのもやっぱり関係あるんだよね?」
「もしかしてまさかの展開かな?」
「え、えぇ!?そうなの?」
「百合はニブチンだなぁ。そんなんだから神崎と一線を越えれないんだぞ」
「か、関係ないでしょ!!」
「で、どうなんだい?」
迫る二人の前に、黙秘を続けるのは不可能と判断して、思い切って白状する。
「うん、私……悠一くんに告白したの」
「…………」
「それで、その……悠一くんも、私の事…」
「「ええええええええええええ!?」」
そこまで言った所で、二人の絶叫が響いた。
そ、そんなに驚く所!?だ、よね…
「な、なになに!!?何でそんな展開になったの?」
「秋持と一体何が!?」
「………秘密」
そう言うと私は笑って二人の間を通り抜ける。
向こうから悠一くんも歩いてきた。
私達はお互いの顔を見て少しだけ微笑んだ。
みんなもそれ以上は何も聞いてこなかった。
前と同じように、みんなでお弁当を食べた。