0-3外伝

□第一話 誕生日パーティー
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「一緒の誕生日おめでとーう!!」

パンッ、パンッ、と小気味のいい音を立てて次々とクラッカーが鳴らされる。

トンガリ帽子に鼻眼鏡、パーティーグッズの定番である二つをつけ、クラッカーを鳴らし付ける少年二人。

橘翔と秋持悠一。

二人はステージの上に立っている。

部屋は広く、軽く100人以上は入るであろう部屋に、数十人集まっている。

「…あ、あの…」

同じくステージの上に立っていた少女が口を開く。

彼女の名前は汐宮百合。

「おい翔、これは何だよ」

百合の後ろから、少年が声をかける。

天風直哉という少年。

橘翔は天風直哉をチラリと見るとスルーを決める。

「今日は集まってもらってありがとう!!」

翔と悠一は恐らく司会なのだろう。話を進める

「…全く、いきなり何よ…」

「あぁ、そりゃ同感だ」

姫川美紀の呟きに、隣に居た夜桜御影が応える。

「何も聞かされずにこんな格好だもの。溜息の一つでも出るわよね」

「…お前とは話が合いそうだな。何だってこんな格好させられんだ」

二人の格好を見ると、美紀はドレス、御影はスーツだ。

それは百合と直哉も同じである。

百合はドレス、直哉はスーツ。

「美紀、お前も何か言ってやれよ」

「あら直哉、似合ってるわよ」

「そ、そうじゃなくて!」

二人のやり取りを見て、御影は溜息をつく。

「…大丈夫ですか?」

「あぁ?」

顔を上げるとそこには、心配そうな顔の百合が居た。

「…別になんでもねぇよ」

「良かったら、お話しませんか?」

その言葉に御影は心底嫌そうな顔をする。

「…何で俺がてめぇと話しねぇといけねんだよ」

それを聞いた百合は少し悲しそうな顔をした。

御影はその百合の表情を見て顔を背ける。

「………」

「…………」

お互い沈黙。

その雰囲気に耐えれず、御影が折れた。

「…チッ。話ぐらいしてやる。だからその顔をやめろ」

それを聞いた百合の表情が一気に笑顔に変わる。

「ありがとうございます!お名前聞いていいですか?」

「…夜桜御影だよ」

「じゃぁ、御影さんですね。私は――」

「汐宮百合だろ」

「わ、何で知ってるんですか!?」

「神崎紘はどうした」

「ひ、紘ちゃんの事も!?えっと、紘ちゃんは今起きたって…」

「……そうかい」

二人はそれから雑談(百合が一方的に)をしていた。

するとステージに一人の女の子が上がってきて、少年の一人、翔に対して文句を言っている。

「ホンット馬鹿じゃないの?一体何がしたいの?」

「見た通りパーティーだけど…」

「アナタは黙ってなさい」

「はい…」

横から口を挟んだ悠一は、佐々木 璃桜の冷たい一言で一蹴された。

「説明して」

「だから…姫川さんとあの怖い人とか汐宮さんと直哉が誕生日一緒だから…」

璃桜の半端じゃないオーラに押され、翔がたじろぎながら応える。

「まぁまぁ璃桜、落ち着いて」

ふと美紀が間に入り、翔に助け舟を出す。

美紀の介入によって璃桜の怒りも少し収まるが、まだその目は納得していない。

「おい翔、ここは一つ褒めとけよ」

「いや、悠一…そういう雰囲気か?」

悠一がこっそりと翔に耳打ちをする。

翔は覚悟を決めて璃桜に言った。

「姫川さんのほうが可愛いな」

ゴツッ

翔は倒れた。

唖然とする一同。翔を倒したのは直哉だった。

「な、直哉?」

「悪い、ちょっとうるさかったから」

直哉は笑顔で言った。すごくさわやかな笑顔なのだが、少し怖い。

「そうだ、汐宮さんはどこにいる?」

「あっこ」

悠一は百合の方を指差す。

「直哉ったら、私以外の女の子をナンパしようっていの?」

「ち、違うから!!元々俺と汐宮さんが誕生日一緒なのもこのパーティーの目的だろ?」

「…そうね。じゃぁ私は夜桜くんの所に行こうかしら」

そう言って二人は百合と御影の所へ近づいていく。
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