0-3外伝

□第一話 誕生日パーティー
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「それで、紘ちゃんが私を後ろに乗せて自転車で隣の県まで行ったの!」

百合はやや興奮気味に御影に向かって話をしている。

御影は聞いているのか聞いていないのかと言った感じに相槌を打っている。

百合は御影の顔を覗き込みながらもどんどん話を続けていた。

「…随分仲がいいみたいね」

「あぁ、そうみたいだな」

あまりの異色のカップルの仲の良さに、直哉と美紀は話しかけるタイミングを失っていた。

そしていきなり美紀が直哉の腕に手を回して、体をピッタリと寄せる。

「み、美紀!?」

「何?」

「いや、そんな素で聞き返されても…」

二人がはたから見れば恋人同士のような事をしていると御影がそっちの方に視線を写す。

「……おい汐宮百合。変なカップルの視線がうざってーから離れろ」

「変なカップルとは何よ失礼ね」

「…美紀のその性格、俺は尊敬するよ」

「あらありがと」

二人がまたまた恋人同士のやり取りをしているうちに百合が御影から離れ、二人に向き直る。

「えっと、こんにちわ。私、汐宮百合っていいます」

「私は姫川美紀。よろしくね」

「俺は天風直哉。よろしく」

二人と握手をすると、百合は御影に向かっていった。

「御影さんも、ほら」

「………」

「あら、話が合う夜桜くん。私は姫川美紀よ。よろしく」

「…あぁ。俺は夜桜御影だ」

チラリと御影が直哉に視線をやると、直哉は少し固い動きで自己紹介をする。

「俺は天風直哉。よろしく」

「……」

「な、何?」

直哉をジロジロと見つめ、御影は笑う。

「お前強ぇだろ。俺とやるか?」

楽しそうに笑いながら御影は手招きをする。

「いや、遠慮しとく」

「…そうかい」

御影は視線を戻し、椅子に座って退屈そうにする。

「……おっかないな」

「直哉闘わないんだ。夜桜くん、見たとこすごい強そうだから面白くなりそうだったけど」

「無茶言うなよ。今日はパーティーだろ?」

「うーん、紘ちゃんまだ来ないなぁ」

「紘ちゃん?」

直哉が聞き返す。

「うん、私の幼馴染なんだ。天風君と同い年、かな」

「へー。楽しみだな」



「第一回、肝試したいかーい!!」

「ふざけろ、まだ昼だ」

翔と悠一が元気よく言うと同時、御影が冷たく言った。

悠一達は怯まない。

「大丈夫、この建物……大きいからね!!」

胸を張って言い放つ。

「別室に仕掛け人の緋藤先生と吉野先生が待機してまーす。七瀬川先輩と美波ちゃんも手伝ってくれる予定が今日は予定が入ったそうです」

その名前に御影は少しだけ、誰にも分からないくらい少しだけ反応した。

案の定、誰もそれに気づいていない。御影が少しだけ笑った事も

「直哉、美奈子ちゃんもいるぞ」

「それを言ってどうすんだよ…」

「尚、今遅れてるバカな神崎くんと、恐らく巻き込まれた萩村さんはほうっておきます」

適当に進めていく悠一と翔。

「ペアは…こうだ!!」

汐宮―天風
夜桜―姫川
橘―佐々木

「俺は仕掛けに回ります」

何故か真昼に行われる事になった肝試しのペアを勝手に発表して、悠一は満足そうに胸を張る。

「待て、何でこんなことしなきゃいけねんだよ」

「そうよ、どうして私がこんなヤツと」

反対派の御影と璃桜

「怖そうだけど、面白そう」

「そうね。逆に驚かせてやろうかしら」

「よっしゃ、やるぞ!!」

賛成派の百合、美紀、翔

「………」

中立派の直哉。

こうして、謎の肝試しが始まった。
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