0-3外伝

□緋藤颯は静かに暮らしたい
3ページ/4ページ

神社の到着。時刻は0時前。

神社前の道路は屋台でいっぱいであり、参拝客の数も半端でない。

ちょっと気を抜くとはぐれそうな勢いだった。

「おい閏海、はぐれないようにしろよ」

「大丈夫です。先生の腕に密着してますから」

大義名分を得た、と言わんばかりの笑顔でがっしりしがみついてくる。

まぁさっきからそうだったわけだが。

「センセ、とりあえずお参りしますか?」

「あぁ、そうだな。とりあえずも何も、それが目的だろ」

「ふふ、そうですね。でもやっぱおみくじと甘酒は必要ですよ?」

「ん、まぁそうか」

そういう事でまずはお参りだ。

賽銭箱の前までくると財布を取り出す。

「ほら、閏海」

適当に小銭を取って渡す。

「っ!!先生…これは…」

「どうした?」

閏海の只ならぬ反応に若干驚きながらも、閏海の視線の先を見る。

そこにあるのは

「……五円にしか見えないが」

「そう、五円です!!」

何故か声を張り上げる。

「先生が、私に五円を……つまり、私とのご縁がって…」

「深い意味はないんだがな」

だが閏海には聞こえていないらしい。まぁいいか。

俺は適当に小銭を投げ入れる。閏海は自分で持っていた十円を投げる。

二拝二拍手一拝、大体出来てればいいか。

神様の前で適当な事をして大丈夫か不安だが、とりあえずお願いしておこう。

閏海はというと、こういった作法はきちんと習っているのだろう。

しっかりとした手順で参っていた。

「さ、行くか」

「はい、行きましょう」

お参りを済ませた後はおみくじを引くことにする。

百円を払って二人分。

箱の中から一つずつ選んで取る。

「ド、ドキドキしますね…」

「そうか?ジャンプの方がドキドキするぞ」

お互い一斉に開ける。

中吉……か。まぁ普通だな。

「閏海、お前はどうだった?」

呼びかけてみたが、閏海は食い入るように見入っていた。

女の子だ、やはり占いなどは好きなんだろう。

「恋愛…自己を保て。ですって!!先生!!」

「いやいやいや、そんな事はないから大丈夫だ」

「先生はどうだったんですか?」

「俺か…?えーっと…」

恋愛…すぐ近くで愛情を注いでくれる者が運命の相手

「さ、結ぶか」

「ちょ、せんせ!?どうしたんですか!?」

こんなのをこいつに見られたらすっごい面倒くさいに違いない。

早めに結んでしまおう。

と、思った矢先問題が発生した。

「何で俺が凶なんだよ!!」

「お前がバカだからじゃね?」

「何でお前と百合ちゃん大吉で俺だけ凶!?」

騒いでいる教え子とバカを発見。

この状況で遭遇するのは非常に不味い。

「う、閏海!!甘酒でも飲むか」

「え?あ、はい。先生のお誘いなら是非」

方向を変えて先に甘酒をいただく事にする。

テントの所に行くと、巫女さんが甘酒を配っていた。

俺と閏海は一つずつ貰う。

「〜〜〜!!何かこの甘酒、変な味がします」

「そうか?別に普通だが…」

「いやいや、私のは変な味がしますよ?新しいの貰って来ます」

「おいおい、あんま巫女さんを困らすなよ」

「先生は巫女さんの味方するんですか!?じゃぁ、私も巫女になります」

「いやいや…ほら、俺のと変えてやるから」

「へ?え、えーと…」

閏海はおずおずと差し出したコップを取る。

「あ、ありがとうございます……」

そう言って恥ずかしそうに口をつけた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ